憧れ尊敬していた彼女は、もういない

今のところ、嬉しい気持ちが3/4くらい。残りの1/4はとても残念に思っていた。話を聞いてみると、どうやら福岡でできた恋人の東京勤務が決まったと同時に、今の会社を辞めて、新しく仕事を探したらしかった。

高校生の頃からずっと憧れ続けていた仕事に就き、第一線で活躍していたかっこよくて尊敬できる彼女が、仕事よりも恋人と一緒にいることを選んでしまったように、私には見えた。今まで培ったものをすべて福岡に捨てて、事務職をゼロからはじめて、きっと本当にやりたいことではないはずなのに、恋人についていくのか、と思った。
もちろん、人の価値観や幸せなんてそれぞれで、私が口を出す権利は絶対にないし、彼女自身が納得をしていればそれでいい。
でも、もうかっこいい彼女はどこにもいない気がして、悲しくて、とても残念に思った。

高校生の頃からの夢を叶えた先には、もっと自立した女性になるとか、もっと大きなプロジェクトを成功させるとか、その世界で有名になるとか、きっとさらなる目標があっただろう。それでも、すべてを捨ててまで、男の人と一緒に過ごすことを決めた彼女。
これくらいの年齢になると、仕事にも余裕がでてきて、もっといろいろなことができるはずなのに。彼女なら、絶対にもっと素晴らしい仕事をするはずだと思っていたのに。どうやら自分の勝手な想像とは違って、それが余計に悲しくさせたのかもしれない。

「4月に入って、仕事が落ち着いたら飲もうよ」と約束はしたけれど、私は彼女の前で、うまく笑うことができるのだろうか。
きっと楽しさは3年前と変わらないのかもしれないけれど、3年間で何も変わらない人なんて絶対にいなくて、もしかしたら久しぶりに会うことによって、私たちの関係は終わってしまうのかもしれないな、と思った。今は会うのが、少しだけ怖い。

Text/あたそ

※2018年3月13日に「SOLO」で掲載しました