孤独は心の中にずっと潜んでいる

そして、半魚人のような存在である彼を嫌い、殺そうとする悪役も登場してくる。その悪役は、軍人であり、地位も持っている。素敵な奥さんと子どもが2人いて、劇中ではとても高価な車を購入シーンだってある。皮肉だな、と思う。何もかも持っている人間が、孤独を抱えて圧倒的に何かが足りていない存在に気味の悪さを覚え、わざわざ迫害しようとするなんて。

私の周りには半魚人のような存在も、私を迫害しようとする人もいないけれど、人と接するくらいでは、どうすることもできない孤独感や悲しみを、ごくたまに感じることがある。 それは、恋人がいないからでも一人で過ごす時間がずっと続いているからでもなくて、少しずつ私のなかで積み重なった層のようなものを誰かの力によって取り除くことはできないんじゃないか、と最近思うようになったからだ。
この種の孤独感のようなものは、人間関係や生活のなかで満たされ続けてきた人にはきっとわからない。絶対に理解の至らない部分なのだと思う。だから、奇妙にも、おかしな人間であるようにも見えてしまう。

この映画は賛否両論で、意見が分かれている。私にとっては、淡々としていて静かですごく好きな映画だった。それぞれの登場人物の持つ孤独に同調し、勝手に自分を重ね合わせて見ていたからだと思う。
人の持つどうしようもない孤独の正体、そしてその気持ちすらもどうしようもないことが描かれていて、エンドロールが終わり照明がつくときには、どうしようもなく駆け足で家に帰りたくなった。

人の寂しさや孤独は分かり合えない。支え合うことはできても、ずっと心のどこかに潜んでいて、死ぬまで付き合っていくものなのだろう、と思う。

Text/あたそ

※2018年3月27日に「SOLO」で掲載しました