「怒り」は間違った弔い方なのかもしれない。会社の嫌いなババアがなくなって思うこと

ババアの訃報

Kerri Shaver

会社の嫌いなババアが死んだ。女性特有の癌が死因で、気づいたら亡くなっていた。会社に来なくなったなと思っていたら休職が発表され、全然戻ってこなくて、そしたら偉い人から訃報が届いて、実は1か月くらい前に亡くなったことを知った。

亡くなった人に対して「ババア」は流石にないのではないか。そうは思うが、私はこのババアにさんざん悩まされ続けてきた。
自分だって結婚していない癖に、私が飲酒・喫煙をすることを話すと「え~妊活したほうがいいんじゃない? いつでも産めるように準備したほうがいいよ」と言われたことがあった。お互いにカレーが好きでよくランチに行っていたのだが、バスマティライス大盛りの同じランチを2人とも注文したくせに「あなたは男の子みたいなご飯が好きなんだね! 私は女の子が好きな小鉢がたくさん乗ったランチが好き」とのたまう。ババアは、その男の子みたいなランチをしっかり完食していた。

まだある。私は酒癖がまあまあ悪い。それは友達の前だけではなく、会社の人の前でも同様で、「まあそういう人だから」で許され続けてここまで来た。ある日の飲み会で、ババアが「この子、本当に酒癖が悪いから気を付けたほうがいいよ!」とまったく話したことのない入社したての人たちに触れ回っているのを見て、ムカついたので面と向かって「は? うっせえな」と普通に結構でかい声で言ってしまい、それからしばらくは挨拶をしても完全無視されるようになる。私の酒癖が悪いことがはっきりと証明された瞬間でもある。
「あー、この人は無視が私に対して効果的だと思っているのか」と思うと、なんだか可愛くなってしまって、それから無視され続けてもめげることなく廊下ですれ違うたびに挨拶をし続けていたのだが、その半年後くらいに一緒に仕事をしなければならなくなって完全無視は終結。それからはコロナが流行り社員同士の交流も希薄になり、ババアともつかず離れずの関係を保ち続けていた。

多分、忘れているだけでまだまだエピソードはきっとたくさんある。私は、このババアにマウントを取られ続けていた。でも2周りくらい年上だったし「そうですね。私よりあなたのほうが可愛くて素敵な女の子ですね。そう思いたいなら勝手にどうぞ」という感覚で、次はどんなマウントを取ってくるんだろう? どんなねちっこいことを言ってくるんだろう? と、ちょっと楽しみにしている自分がいた。私も私で、同じくらい性格が悪いのだ。ババアのことは、別に好きでもなんでもない。どうせならネタにしてやろうくらいの感覚で付き合い続けてこられたのは、違う部署だったからでしょう。実際のところ、ババアは後輩や部下の女の子を何人も辞めさせていたので社内でも問題視されていた。