「ファンです」と名乗るくせに
同時にわたしも、一部で“名前のある女性”でもありました。初めて会う人に名前を告げて「あっ、知ってる!」と言われるばかりでなく、時には「ファンです」と近づいて来てくれる人もいる。もちろんそれは嬉しいことだったけれども、少し複雑な思いもありました。だって「ファンです」と名乗るくせに、わたしのイベントに来たこともなければ、作品を読んだこともなかったりするからです。
さらに酷いのはまるっと誰か別の女性と勘違いしている場合すらあって、そうするとついつい「わたし自身に興味があるわけではなく、ミーハーな下心を持って近づいてくるんだから、どう扱ってもいい」「わたしのことなんて、ロクに知らないくせに」と、妙に攻撃的な気持ちが生まれてしまう。だから思うのです。“名前のある男性”が、近づいてくる女の子を簡単にヤリ捨てするのも、そんな攻撃的な気持ちからではないだろうか。
Text/大泉りか
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