「自分を好きになろう」と言うけれど。私は、好きになれない私を受け止めたい

自分を中心に置いた価値観

by Tanya Trofymchuk

ここ最近、社会の中央を辿る思想と言えば「自分を好きになろう」とか「他人ウケより自分ウケ」とか「自分の機嫌は自分で取る」とか。要は、人の目を気にせずに自分の好きなようにしましょう、自分が本当に好きなものを見つけましょう、みたいなそういう考え方が主流になってきていると思うんですけど、だんだんそれもしんどく感じている自分がいる。

いや、全然いいんです。ファッション・メイク・アクセサリーすべてにおいて、「それじゃあ男にモテないよ」と言われてムっ……とする機会がなくなるだけで息がしやすくなったし。一目惚れしたワンピースに合うようなメイクをして、外を少し歩くだけでも気分が上がって、自分のことをちょっとはマシな人間なんじゃないかと思えるようになる。デリカシーがないのか、神経が図太いからなのか、元々人の目をあまり気にしてこられなかったから、偶然的に時代が私に合わせてくれたような気さえしている。

何より、自分の価値を中心に置くことで、男女とか恋愛とか性別のしがらみがなくなる。それが私にとってはありがたかった。今は会社員として働いているが、服装は自由なので、ド派手な柄シャツを着ていくこともあるし、ほぼパジャマみたいな服装なときもある。でも、誰にも何も言われない。それは私の性格的な面だけではなく、時代に合った価値観が人のなかに根付いているからだろう。

という訳で、私は私で今の価値観のなかで生きられて結構幸せなのである。各段に生きやすくなっていることは間違いない。服装や持ち物もそうだが容姿や年齢に対して何か言ってくる人もいない。「恋人は?」「結婚は?」「子どもを産まないと後悔するよ」と言ってくる人もいなくなった。人に感情を逆なでされる機会がなくなると、周りの目がより一層のこと気にならなくなるのである。それだけで穏やかな毎日が手に入る。

仕事もまあまあ順調で、贅沢はできないけどお金に困ることもない。家には鳥がいて、趣味もたくさんある。友達もいる。今の生活に何か不満はあるかと問われても、特には見当たらない。これも、自分を中心に置いた価値観が世の普通と見なされた結果なのだと思う。