「普通」しか許されない社会でどう生きるか

恋愛をする気もなく、結婚や出産にもあまり興味がない私は、きっとこのまま年を重ねて「行き遅れの負け犬お局ババア」と見なされてしまうのだろうか。トイレの奥のほうや飲み会の席で「あの人なんで結婚してないんだろうね?」「いや、あれじゃ無理でしょ」「将来どうするんだろうね」とか、言われるような。「この前、20代の男性社員と話してたけど、狙ってるよね」「あの人とサシ飲みしてたらしいよ。絶対何かあるよね」と噂をされるような。「女って怖い」「女同士はどろどろしているから」の中核だと認識されるような。

今の社会や会社の空気では、私のようなバリバリ仕事ができるわけではない未婚の女にはそのポジションしか残されていないように感じる。社会は少しずつ進歩しているはずなのに、私の周りはずっと変わらないままなのかもしれない。でも、普通しか許されない社会以外で生きていく方法が私にはわからない。

先日、たまたま会社のHPを開き、会社概要を眺めると、役員には女性の名前がほとんど見当たらなかった。それもすべて実力で、当然の結果で、不思議に思う人は誰もいない。女性社員がほとんどいなくて僅かな女性社員も比較的早く辞めてしまうのも、その癖に契約社員や派遣社員が女性ばかりなのも、なんてことはない普通のことなのだろう。誰も気に留めたりなんかしない。

ああ、ここは私の生きる社会なんだ、と思った。自分の何かが削り取られようが、なかったことにされようが、自分の普通が認識されなくて許されないものであろうが、私はここで生きていかなければならないのだ。

Text/あたそ

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