あなたの心の闇は、どんな色をしていますか?『ふがいない僕は空を見た』

 タナダユキ ふがいない僕は空を見た永山絢斗 田畑智子 原田美枝子 窪田正孝 三浦貴大 山中崇 東京テアトル 2012「ふがいない僕は空を見た」製作委員会

 恋人がいても、家庭があっても、どんな人でも心の闇があるはず。その闇を真正面から描いたこの物語には、不器用に生きる登場人物の「性」と「生」が赤裸々に描かれています。
第24回山本周五郎賞を受賞した窪美澄の同名小説を、日本映画監督協会新人賞を受賞した『百万円と苦虫女』のタナダユキ監督が映画化。繊細な高校生・卓巳を永山絢斗、心の闇を抱える主婦・里美を田畑智子が演じ、原田美枝子、窪田正孝、三浦貴大といった日本映画に欠かせない出演陣が脇を固めます。妊娠や出産など、女性監督ならではの視点は共感を覚える部分が多く、女性なら誰しもが抱える“闇”を主人公と共有できるはずです。

 一人息子の高校生・卓巳(永山絢斗)は友人に誘われたアニメのイベントで、主婦・里美(田畑智子)にナンパされる。里美は卓巳を家に連れ込み、アニメのコスプレをして情事に耽る。里美はマザコンの夫・慶一郎(山中崇)の母・マチコ(銀粉蝶)から体外受精や不妊治療を強要され、家に居場所がない。卓巳だけが心の拠り所で、身体を重ねる日々が続いていく――。
友人からの助言で、里美との別れを決意する卓巳。やがて二人の関係が知られていき、更にはコスプレの画像と動画がネット上に出回ることになり……。

 劇中で描かれる「性」と「生」には喜びと切なさがつきまとい、常に一つの感情で生きているわけではない男女の生々しい姿が映っています。
激しい性描写にも挑戦した田畑智子の演技は必見。
どのシーンもあなたの心をかきむしり、他人事とは思えない心の闇を体現しています。
「性」と「生」とともに暮らすために、この作品で女性として生きる自分と向き合ってみてはいかがでしょうか。

ふがいない僕は空を見た タナダユキ 永山絢斗 田畑智子 原田美枝子 窪田正孝 三浦貴大 山中崇 東京テアトル 2012「ふがいない僕は空を見た」製作委員会

11月17日(土)よりテアトル新宿ほか全国ロードショー

監督:タナダユキ
キャスト:永山絢斗、田畑智子、原田美枝子、窪田正孝、三浦貴大、山中崇
配給:東京テアトル
2012年/日本映画/142分
URL:映画『ふがいない僕は空を見た』公式サイト

Text/Michihiro Takeuchi