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  • 2015.06.19

結婚直後なのに「余命わずか」と宣告されて…ある夫婦の闘病生活を綴ったブログが映画化『夫婦フーフー日記』

結婚直後にヨメ・ユーコに悪性腫瘍が見つかり、ダンナ・コウタがその闘病生活をブログに綴る。間も無くユーコは他界し、ブログの書籍化が決まる。そんなときに、なぜか死んだはずの彼女が目の前に現れて——佐々木蔵之介×永作博美で実在のブログの映画化

 知り合って長年の月日が経ってようやく結婚したのに、“余命わずか”だなんて……。

 一時期、映画界に空前の「余命ブーム」があったこと覚えていますか?それは病死から交通事故死までバラエティに富んでいて。「死のカウントダウンが無ければ恋も愛も描けない」という暗黙のルールに違和感を覚えていました。

 でも、この本作はいわゆる“泣ける”難病モノとは一線を画しています。「お前、本当にこれを映画化するのか?」「彼女の死を売り物にしていいのか?」という葛藤が劇中にも描かれ、彼が切実に込めた“遺す”意志に斜に構えて観る者ですら涙を落としてしまう。

たけうちんぐ 映画 死ぬまでには観ておきたい映画のこと 佐々木蔵之介、永作博美、佐藤仁美、高橋周平、並樹史朗 ショウゲート 夫婦フーフー日記
(c)2015 川崎フーフ・小学館/「夫婦フーフー日記」製作委員会

 NHKでドキュメンタリードラマにもなった、夫婦の闘病ブログを基にした書籍『がんフーフー日記』を『婚前特急』『わたしのハワイの歩き方』の前田弘二監督が映画化。

 生真面目で嘘が付けず、慎重に物事を考える、A型気質の夫・コウタを佐々木蔵之介、天真爛漫で遠慮がなく、何でも率直に物を言う、B型気質の妻・ユーコを永作博美が演じる。知り合ってから17年を経て結婚したことに説得力を感じさせるキャスティングです。

 ほかにも佐藤仁美、杉本哲太、宇野祥平といった個性豊かな面々が脇を固め、一組の夫婦の「別れ」、いや、それよりもうちょっと先が描かれています。

自分の心による幻影?それとも幽霊?

【簡単なあらすじ】
長い友人付き合いを経て、出会いから17年目で結婚したダンナことコウタ(佐々木蔵之介)とヨメことユーコ(永作博美)。入籍して間もなく妊娠して大喜びするのも束の間、ユーコの直腸に悪性腫瘍が見つかる。

 ユーコの闘病生活をブログに綴っていくコウタ。二人の間に子ども・ぺ〜が産まれるが、ユーコの容態が悪化し、息を引き取ってしまう。
やがてブログの書籍化の話が舞い込み、現実逃避するように原稿を進めていくコウタの目の前になぜかユーコが姿を現わす。

これは自分の心による幻影か?それとも、幽霊か?戸惑うコウタは葛藤をしながら、死んだはずのユーコとともに文章を推敲していくーー。

死んだはずの妻の存在感たるや。

「死んだはずの妻がいつも傍にいる」なんて聞くと、優しく見守ってくれているとか、いつまでも心はここにあるよとか、陳腐なラブストーリーに思えるかも知れない。

 しかし、今作は、死んだ妻がやたらとうるさい。自分の死を少しでも美談に書いてもらおうと茶々を入れ、生前以上に存在感を放っている。

「そこじゃなくて、ここを書けよ!」と口うるさく叱責されながらも、旦那は二人の出会いから別れまで回想していくことで、ユーコではなく自分自身と向き合っていくことになる。

たけうちんぐ 映画 死ぬまでには観ておきたい映画のこと 佐々木蔵之介、永作博美、佐藤仁美、高橋周平、並樹史朗 ショウゲート 夫婦フーフー日記
(c)2015 川崎フーフ・小学館/「夫婦フーフー日記」製作委員会

“泣ける”要素が詰まっているのに、永作博美が演じるキャラクターがなかなか泣かせない。お酒を飲めば悪酔いし、ロマンチックな場面でいつもお茶を濁してくる。面倒くさいが憎めないヨメのせいでいつの間にか笑いに溢れて、よくある難病モノのラブストーリーとは全く真逆の色を塗る。

 しかし、だからこそ彼女がすでに死んでいるという事実が喪失感を与える。言ってしまえば、コウタは独り言を呟いているようなもんだ。
その悲しみにふと気づく瞬間があり、思わず虚空を見つめてしまうような味わいを残す。

大きな“伝える”意志で、ヨメの生きた証が映画になった。

 コウタの手段は、ブログを書くこと。ヨメが生きた証を “遺す”意志はやがて“伝える”を伴い、ブログを超えて映画になった。

「死んだはずのヨメが、残されたダンナの前に現れる」は、もちろん映画化にあたって新たに加えられた大胆な設定。
実話ブログの真実性と、映画でしか表現できないある種のファンタジックな描写が合わさり、一つの大きな作品として私たちに“伝えてくる”。

たけうちんぐ 映画 死ぬまでには観ておきたい映画のこと 佐々木蔵之介、永作博美、佐藤仁美、高橋周平、並樹史朗 ショウゲート 夫婦フーフー日記
(c)2015 川崎フーフ・小学館/「夫婦フーフー日記」製作委員会

 コウタが、ヨメとのやり取りは「自問自答だった」と気づいた瞬間、映画はフィクションを離れ、極めて身近な体験になる。

 誰もがパートナーを選んだ時点で、先に逝くか、見送るかの二者択一は避けられない。

 笑って生きている喜びを噛み締め、今生きている相手とたくさん笑い、愛していく。
幻影でも亡霊でもなく、そこに一緒に存在していることの奇跡を、今目の前にいる人と体感してみてはいかがでしょうか。


5月30日(土)、新宿ピカデリーほか全国ロードショー

監督:前田弘二
キャスト:佐々木蔵之介、永作博美、佐藤仁美、高橋周平、並樹史朗
配給:ショウゲート
2015年/日本映画/95分
(c)2015 川崎フーフ・小学館/「夫婦フーフー日記」製作委員会

Text/たけうちんぐ

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たけうちんぐ
ライター/映像作家

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