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  • 2016.07.16

「SM」や「下半身の衝動」は、良くも悪くも人生を変える力を持っている?

束縛したがりの彼氏と別れた大泉さんは、それまでの鬱憤を晴らすかのように青春を取り戻しに走りました・・・そこで、自分の人生を変えたと言っても過言では無いものに出会うことに!それは「SM」と「下半身の衝動」。さて、この二つから突き動かされたがゆえに取った行動とは…?

無駄にした「青春」を取り戻すために

大泉りか 人妻は不倫の夢を見るか?
©gaelx

 束縛したがりの恋人と別れたわたしは、それまで大人しくしていた借りを返すかのように、熱烈に遊び始めました。
キャバクラでのバイトを復活させ、週末は六本木のクラブに通って踊り狂い、テキーラを飲んでグデグデになって吐き、そこで知り合ったよくわからないけどお金だけはあるオジサンたちに連れ回されて何軒もハシゴして、山頭火でしめのラーメンを啜る。
1年ほどの間、無駄にした青春を取り戻そうと必死でした。

 刺青を入れたのもこの頃です。
半分入れたところで「やっぱ止めてください。痛くて無理です」と根をあげてタトゥーアーティストの人に呆れられながらもなんとか完成した小さなタトゥーは、趣味も嗜好も青かったこの頃に選んだモチーフだもんで、ババアになった今は恥ずかしくて仕方がありません。
背中に羽根ですからね!

 そんな中、わたしにひとつの出会いが訪れました。
その出会いはその後のわたしの人生を変えたといってもいいかもしれません。
SMとの出会いです。

 そもそも、物心をついた時から本を読むことが好きでした。
というか、ファミコンもビデオデッキもなく、テレビもリビングに一台のみ。
三人きょうだいのためにチャンネル争いが熾烈だった我が家で、自分のペースで楽しめる娯楽というものは本しかなかったので、とにかく幼い頃は、家の中では、文字ばかりを読んでいました。
父親は出版社勤め、母親も元漫画の編集者だったので、家には書籍がたくさんありました。

 本の中でも、とりわけ興味を引かれるのは“肉体”
それも“下半身”に関して書かれたものでした。
といっても、両親は注意深く、性的な事柄が書かれた書物を家の中に持ち込まないようにしていたので、以前にもここで書いた女性誌に掲載された体験談を集めた『淑女の雑誌から』というページのある『週刊文春』は我が家にある貴重なエロ資源でした。
ある時には、下半身的読み物に事欠いて、『家庭の医学』に手を出し「そんなもの読むと、どこか病気があるって心配になるだけだから辞めなさい」と呆れられていた幼少期を経て、自分で図書館に足を運べる年齢になった時は感激でした。
両親の検閲なしに、置いてにあるどの本を読んでもいいのです。

「下半身の衝動」は人生を変える力を持つ

 しかし、図書館に置いてある本の中でエロいものを探すのは、なかなか困難でした。
今と違ってその当時はインターネットもなく、そして身近にエロい文学に精通した友人もいなかったからです。
そんな中、ようやくのこと見つけたのが村上龍の本
最初は「家にもある村上春樹を読んでみよう」と思い立って、ふとその隣にある龍の本の背表紙に目が留まり、試しに手に取ったのがキッカケでした。
読んでみたら春樹よりもずっとしっくりとしきて、読み進めるうちにたどり着いたのが『トパーズ』です。
いままで図書館で借りて読んだどの本よりも直接的にエロく、その後、古本屋で探して買い求めて手元に置く用になりました。
もちろん、 オナニー用です
こうして村上SMの洗礼を受けたわたしは、ずっとSM的な世界に憧れていました。
どうにかしてその世界を覗き見たいとも思っていました。

 それから数年がたち、例の束縛の強い恋人と別れたばかりの頃、ちょうど両親が、わたしにパソコンを買い与えてくれました。
大学の生協でセット販売していた二十数万の代物ですが、パソコンの値段としては、当時はそう高くはなかったと記憶しています。
突如、パソコンを買い与えられたのはいいものの、何をすればいいのかさっぱりわからず、しばらくは宝の持ち腐れ、部屋のインテリアと化していましたが、ある時、ふと思いついて、村上龍で検索ですると、ファンの人たちが集まっているファンサイトを発見しました。
パソコンを通じて、人と知り合えるとは思っていなかったので、衝撃の発見でした。

 そこにはメーリングリストという、メールを通してチャットするようなシステムがあったので登録し、龍ファンの人々とやりとりしあうになりました。
一応は村上龍というフィルターを通しているだけあり、皆、文学の好きな人たちばかりでしたが、龍自体が広いテーマで作品を書いているので、政治的な話題が好きな人、キューバミュージックが好きな人、テニスが好きな人、野球が好きな人、サッカーが好きな人、ワインが好きな人と様々で、その中にはもちろん、SMが好きな人たちもいました。
時折、オフ会などもあり、わたしも何回か参加したりもしていたのですが、その中で知り合った同じ年の大学生の男のコに、ある時、「渋谷のクラブイベントでSMショーが観れるらしいんだけど、行ってみない?」と誘われたのです。

 もちろん、迷うことはありませんでした。
二つ返事でオーケーし、当日、ふたりで道玄坂の上のほうにあるクラブへと向かいました。
そして、初めてそこで、SMショーを目撃したのです。

 男性の縄師の方が女性を縛って様々な責めを行うショーでした。
イベント自体はハードコアテクノのイベントだったのですが、そのせいか、お客さんは、みなオシャレで、出演者の人たちも、フェティッシュなボンデージを身に着けていて、羽根モチーフのタトゥーを入れるような二十歳の小娘が、「カッコイイかも……」とぽーっと惚けるようなスタイリッシュな雰囲気に満ち溢れていました。

 ショーが終わり、興奮冷めやらぬままにダンスフロアにいると、先ほどショーをしていた縄師の男性の姿を見つけました。
すぐさま近づいて、「さっきのショー、すごい良かったです!初めて見ました!感動しました!」というようなことをアホっぽく告げると、縄師の男性は「今度はもっと小さいバーでするのがあるんだけど、良かったら、遊びにこない?」とフライヤーを手渡してくれたのです。

 ひとりでバーに行くなんて、初めての経験だったので尻込みする気持ちはありましたが、けれども、それ以上に好奇心が勝りました。
良くも悪くも、恋は人に人生を変える力を与えますが、下半身の衝動もそれに匹敵するパワーを持っている。

 こうしてわたしは下半身に突き動かされるまま、翌週、そのバーへと単身脚を運んだのでした。

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Text/大泉りか

次回は《セックスこそが終わった恋をきちんと成仏させるための手段》です。

ライタープロフィール

大泉りか
キャバ嬢、SMショーのM女、ボディペインティングのモデルなどの経歴を経て、現在は官能小説家、ライトノベル作家。

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