• love
  • 2015.02.02

恋に恋するかのごとく絶望に絶望してるから生きておく

バレンタインデー。女子は意中のイケメンにチョコをあげるのか。もしくは権力のある者に賄賂として送るのか。そしてそこに現れる愛情表現はどんなものがあるのか…。そんな巷にあふれる様々なバレンタインデーの思惑を、短歌にのせてお送りします。今回の第1回目は「小学生暗黒編」!

佐々木あらら 初体験 処女 童貞 バレンタインデー エロ短歌
by Alaskan Dude

 バレンタインデーは、政治だ。

 そんな偏見を持って生きています。

 小学4年生までの僕は、毎年チョコレートを4つぐらいもらう子でした。男子全員に配るものすごくマメな子と、男の趣味がちょっとマニアックな子だけがくれる、という内訳。

 当たり前のようにたくさんもらってその数を自慢するモテ男子に軽く嫉妬しつつも、別世界の話だとわきまえて、毎年ありがたくお返しをしていた記憶があります。

 ところが5年生になると、突然、チョコが20個以上に。確かクラスで一番もらったんだと思う。

 理由は、急にかっこよくなったから、ではありません。ひょんなことからその年だけ、学級会長をやっていたから。

「しょせんこの世は権力のある者が勝つのか……」

と戦慄したのを覚えています。

 そこで権力欲に火がついて政治家を目指し……というのなら潔いのですがそんなこともなく、ぼんやりとした女性不信がぬぐえぬまま、思春期に突入していきました。

 今でも、政治の話題で「収賄」とか「企業献金」とか「清き一票を」とかいうフレーズを聞くと、あのころのクラスメートの女の子たちの顔が思い浮かびます。脂ぎったおっさんたちがチョコをあげたりもらったりしているイメージも、うっすらと。

 どうせなら選挙も投票用紙に名前を書くんじゃなくて候補者にチョコをあげる形で決めればいいのに。今よりもっと真剣に、誠実な人が選べるような気がするんだけど。

 というわけで、大人も子供もそれぞれの思惑を抱いてすれ違うバレンタインデーの怨霊ラブメモリー、1回めは「小学生暗黒編」をお届けします。

「みんなと遊んだほうが楽しいと思います」

はっとさん(東京都)
エピソード:
 小学5年生のとき。
 バレンタインの翌日の下駄箱にハート形のチョコレートと手紙が入っていました。
「ハート形だし、いくらか気はあるんじゃないの!?」と期待して手紙を読んだら、
「これは義理チョコです。よかったら食べてください。4年生のとき、はっとくんがポートボールでオウンゴールして悔しくて泣いちゃったとき、怖くて慰めてあげられなくてごめんね。
 あと、休み時間は外ばっかり見てないで、みんなと遊んだほうが楽しいと思います。それでは」
と書いてありました。
 きっとこの子は僕のこと好きなんだろうな、でもこれが本当の優しさなら優しさなんて要らない、と子どもながらに思いました。
 手紙に名前はなく、いまだに誰がくれたのかわかりません。

 はっとさんはきっと、母性本能をくすぐるタイプだったんでしょうね。

 小学生なのに妙に母性が強い女の子、そういえば僕の子どものころにもいました。ランドセルしょってるのにどこか「二児の母」の貫禄がある子。「熟女系少女」と名づけましょうか。

 思春期、ましてや小学5年生でそのタイプの優しさに愛を感じろというのは酷。男子って、いや、女子だって、ドラマに出てくるような甘い恋愛を求めてしまうものです。

 それはそうと、「これは義理チョコです」とあえて書いてあったりするところに、この女の子の遠慮がちな乙女心を強く感じるのは、深読みがすぎるでしょうか。

「私なんか、ストレートに『好き』と告白しても気持ち悪がられるに決まってる。だから匿名にして、好きという気持ちもできるだけ隠して、彼が幸せになるためのアドバイスだけこっそり伝えておこう」

みたいな、恋に自信のない子に特有のねじれ。ああ、なんといじらしい。

 はっとさんが一緒に送ってくれた短歌は、

ほんとうのやさしさなんていらないよ ぐじゃぐじゃにあまいあまいシロップ(はっと)

という素敵なもの。でも、はっとさんの心よりも、この匿名の熟女系少女の心に隠れる怨霊を強く感じとってしまったので、今回はこっちを成仏させてあげましょう。

このチョコは捨ててもいいよ 「好き」なんてジャイ子のくせになまいきだよね

 なぜかドラえもんの短歌に。そのままでは卑屈すぎる想いをアニメキャラをつかってごまかしてみました。

 あと、一緒に送ってくださったもうひとつの短歌、「八月のオウンゴール」というフレーズ、かっこよかったです。うまく活かしてもっといい作品になりそう。がんばって。

水にコーヒーを溶かして……

ビスケットさん(北海道)
エピソード:
 我が家は餃子やシューマイも冷凍食品で済ませる「作らない」家庭でした。
 小学校1年生のおませな私はテレビで、好きな人にチョコレートをあげる日を知りました。
「あげるなら手作りがいいな!」
と思い立ち、
「水にコーヒーを溶かして凍らせるとチョコレートになるはず」
と、すぐ実行。
 その後、タッパに凍った茶色い物が母と祖母に発見され、大騒ぎになりました。
 恥ずかしくて何を作ろうとしたかは教えませんでしたが、あとで母から「これでチョコ買っておいで」とお金を渡されました。
 今日、肉まんを生地から手作りしながら、娘に「大人になったら餃子や肉まんは生地から手作りするのだよ」とお祈りのように伝えました。

チョコレート作り損ねて凍ってる母よ教えて愛とはなあに(ビスケット)

 あー、あるある! 子どもの思い込みでつくる適当クッキング。二十歳ぐらいまでは僕もしてたと思う。

 チョコレートって、確かにどうやってつくるかわかりにくい物ですよね。

 手作りチョコだって、原理的には、市販のチョコを溶かして固めるだけだし。

 ついでに勇気を出して言っちゃいますけど、手作りチョコって、本命の人に贈るのに向いてないと思う。なんというか、謝罪のしるしに頭を坊主にするのに似てる感じ。

「誠意は伝わったが、うーむ、それはこちらにとっては嬉しいことなのか、な……」みたいな気になります。

 贈り物って「この人は自分が何がほしいかをちゃんと見ていくれてたんだなあ」という物をもらうときにいちばん愛を感じますよね。バレンタインだろうが、男女だろうが、関係なく。

 もちろん「自分のために手間暇かけてくれた気持ち」がいちばんほしい物だ、ということもあるけど、そういうときはきっと「タッパ入りの凍ったコーヒー水」でもじゅうぶん愛を感じられるんだと思います。

黒こげのチョコクッキーも半べその君も甘くてバレンタインデー

 ビスケットさんにも、手作りチョコを配りまくる女の子になりそうな娘さんにも、幸あれ。

 というわけで、今回はここまで。

 余談ですが、以前、「チョコことば」というのを発明したことがあります。

・「チョコことば」いかがですか

「花ことば」というのは、贈る花に秘めた思いをこっそり乗せることができる仕組みですが、それの義理チョコ版をつくろう、という試み。

 テキトーでダジャレ好きな友人とつくったので使い道のないチョコことばも多いんですが、よろしければ。好評だったらまた増やそうかな。新商品のチョコも増えてるし。

 では、引き続き「バレンタインデーにまつわる恋愛怨霊エピソード&短歌」募集しております。思い出したら、こちらのフォームから、ぜひ。

 エピソードは長く書いてくださってもオーケーです。こちらで短めに整理してリライトさせていただきます。ご了承を。

 ではまた来週。

Text/佐々木あらら

関連キーワード

ライタープロフィール

佐々木あらら
阿佐ヶ谷生まれ阿佐ヶ谷育ちのエロ歌人

今月の特集

AMのこぼれ話

アンケート

「お酒の席」の短歌&エピソード大募集!

エロ歌人・佐々木あららさんが講評してくださり、大賞に選ばれたら豪華賞品も!

アンケートはこちら