年齢と妊娠・出産率

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編集部

次に、年齢による妊娠・出産率について教えてください。

香川先生

自然妊娠は統計がとれないので、体外受精での妊娠・出産率についてお話ししますね。

編集部

はい、お願いします。

香川先生

ではまず、卵子や精子は「男女ともに34歳までの生殖効率が良い(母子にとっても、男性の遺伝情報の正常性や精子の機能においてもっとも効率が良い)」こと。お母さんと子どもが安全に出産できる限界は44歳。「生理がある限り産める」は勘違いです。
このことを、基本的な妊活の情報として知っておいてください。

編集部

じゃあ34歳までなら妊娠しやすいのでしょうか。

香川先生

体外受精を34歳までに受ければ、1回の治療あたり約20%が出産できます。でもこれが治療の限界なんですね。良くて20%です、若くて20%なんです。

編集部

34歳でも出産率ってそんなに低いんですか!?

香川先生

みなさん妊娠=出産って考えてるけど、流産することもありますから。
流産というと、「うっ!」とお腹を抑えてドバーッと出血、みたいな姿を想像しますが、自覚症状のない流産がほとんど。
そんな自然流産がだいたい15%くらいなんですよ、若くても。

編集部

え、意外です。

香川先生

34歳までの男女の生殖効率が高いと始めに述べたのは、年齢が上がると妊娠から出産に至る確率が下がってくるためです。
その流産の確率が、41歳になったら41%まであがります。まれに芸能人の高齢出産がニュースになっていますが、めずらしいからニュースになるんです。40歳の人が体外受精しても、そもそも10%も出産できないので。8%ですよ。

編集部

40歳だと治療しても出産できるのは100人中8人か……。

香川先生

それが34歳までだったら20%です。

編集部

跳ね上がった気がしますね。

香川先生

8%と比べたらそうかもしれませんが、それでも20%は「低い」と思っていい数字です。体外受精が1回50万円ですよ。20%の勝率に50万円賭けられますか?

編集部

こわくて賭けられない……。

香川先生

その感覚の方が正しいのですが、みなさん自分は20%に入ると思ってしまいます。

編集部

体外受精ってもっとすんなり出産まで至るものだと思ってました…。

香川先生

体外受精って、体内受精ができない人たちのための治療法なんです。だから体内で受精できる人たちは、そもそも体外受精より体内受精のほうが受精率は良いんですよ。

編集部

では、何歳くらいから妊活を始めればいいんでしょうか。

香川先生

産みたい子どもの数と子作りを始める年齢の研究成果って、実はもうあるんです。

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編集部

体外受精なら、妊活スタートまでの猶予がもっとあると思ってました。

香川先生

体外受精は体の外で受精させるだけで、別に卵子や精子が若返るわけじゃないですから。
先ほど言ったように、44歳っていうのが赤ちゃんとお母さんの安全な出産リミットです。
その年齢までに何人産みたいのかをふまえ、何歳まで自然妊娠にトライするのか、いつ体外受精に切り替えるのか検討してください。