34歳でも体外受精の出産率は約20%?卵子のプロに聞く妊娠と加齢の知識

加齢がこわい理由に「出産はいつまでできるの?」という不安があげられると思います。

子どもが欲しい人はもちろん、欲しいのかわからない人も、いつまで悩んでいられるのか。
いつか後悔しないように、妊娠の知識はもっておいたほうがいい。

卵子凍結保存をおこなう民間会社「プリンセスバンク」の所長であり、生殖工学博士で『私、いつまで産めますか? 卵子のプロと考えるウミドキと凍結保存』の著者でもある香川則子先生に、「妊娠」についてうかがいました。

将来妊娠したいなら

香川則子先生インタビュー画像
編集部

本日は妊娠について色々うかがいたいのですが、正直、まだ妊娠出産にピンときてない読者は多いと思います。そんな女性でも、いまからやっておくべきことはありますか?

香川先生

女性が自分の子宮で妊娠出産を望む場合は、子宮頸がんワクチンや妊娠中の母子感染を防ぐ予防ワクチンや必要な抗体検査を受けておくことが重要です。

また、自分だけでなく、妊娠前にパートナーや育児支援をお願いする家族にも風疹や麻疹のワクチンを始め、インフルエンザや肺炎球菌、帯状疱疹のワクチン接種を検討してもらってください。

編集部

風疹や麻疹は聞いたことありますが、子宮頸がんワクチンは知りませんでした。

香川先生

子宮頸がんはワクチンで防げる唯一の癌です。
日本でも10代の女の子に定期接種(自己負担無し)していますが、現状は母親が消極的でワクチン接種を控えさせられている女子がたくさんいます。
けれど、がんの予防効果は性交渉前のワクチン接種がベストのタイミング。日本産婦人科学会ではHPVワクチン接種を「中1から高1になる女子へ」呼びかけています。

とくに産婦人科のがん専門医は、これから感染するHPVを9種も防除できるワクチンが登場したため「打っていない人は、自費でも、大人でもいいから打って」と言ってるほどです。「なぜ自分たちはこれから産みたいと思っている若い女性の子宮を摘出し永久不妊にし続けなければいけないんだ」と。

編集部

子どもが打っても大丈夫なんですね。

香川先生

一般市民は集団ヒステリーやクララ病も含めて副反応をおそれていますが、10代は多感で、友人が不調を訴えていたらそういえば自分も……と、体が反応してしまいやすいもの。そこに「脳神経に障害をもたらす」という信州大学のマウス実験の捏造データが出てしまったので、不信感が根付いてしまったのかもしれません。

編集部

そんな背景があったのですね。

香川先生

けいれんや痛み、学習不振や不登校など「子宮頸がんワクチンの副作用だ」と騒がれている症状とワクチンの因果関係を示す証拠はなく、そういった症状は、ワクチンを打っている子にも打っていない子にも同じくらいの割合で見られるというデータが日本でも海外でも出ています。だから基礎疾患などのない人の場合、安心して打つことができるものです。
けれど、接種率がまだ数パーセントなので、そこも不安なのでしょう。

編集部

周囲に接種してる人がいないと不安になりますよね。

香川先生

とくにお母さん方は子育ての責任をひとりで負わされがちで、(自分が未経験で難解な)新しい医療に不安なのはわかります。だからこそ、成人の私たち大人が命や子宮を守るためにどんどん打って「なんだ全然大丈夫じゃん!」って安心してほしいですね。

編集部

自費だとどれくらいかかるのでしょう。

香川先生

私は11年前、まだ日本で打てない「カーダルシル4」をヨーロッパから輸入して打ちました。当時10万円(要3回接種分)! バッグも欲しかったし、温泉旅行にも行きたかったし、奨学金も払ってたけど(笑)、癌と医原性不妊にはなりたくなかったので打ちました。

いまは「カーダルシル9」という新しいワクチンを輸入して接種してくれるクリニックがあり、1回3万円くらいで受けられます(3回接種推奨)。子宮頸がんに発展しやすいウイルス9種類に対して、抗体を持つことができるんですよ。

編集部

高いけど、がんの可能性が潰せるなら……。

香川先生

妊娠予定のない45歳未満のママたちももちろん打ったほうがいいです。ママになったら頸癌なんて子宮ごと取ればいいじゃんって思ってる人もいますが、頸がんで死ぬ可能性もあり、手術の後遺症とか、回復までどれくらい時間がかかるのかを考えたら、打っておいたほうがいいですよね。
私ももう妊娠する予定はないですが、幼い子どもたちの母親としてがんで死ねないので再度打ってもらう予定だし、身内にはみんな打たせてます。自分も打つ、子どもも打つ、姪っ子たちにも打たせる。知ってる人たちにはとにかくワクチンを打ってくださいと。

編集部

女性はみんな打っておいたほうがいいですね。