「いつか産みたい」「2人目欲しい」の精神的保険?卵子凍結の話

加齢をこわがってしまうのは、妊娠・出産の正しい知識を持っていないからではないでしょうか。
前回は、『私、いつまで産めますか? 卵子のプロと考えるウミドキと凍結保存』の香川則子先生に妊娠・出産の基本的な知識をうかがいました。

今回も引き続き香川先生に、妊娠した場合に知っておくべきこと、そして「まだ子どもが欲しいのかわからない」という読者のため、卵子凍結についてうかがいました。

妊娠中の母子感染を防ぐために

卵子凍結保存の専門家である香川則子先生
編集部

次は妊娠中に知っておくべきことを教えてください。

香川先生

妊娠中、とくに怖いのが、性交渉、子どもの食べ残しやオムツ替えから感染する先天性サイトメガロウイルス感染症です。
もう1はガーデニングやネコの糞などから感染する先天性トキソプラズマ症
この2つは妊婦のときに初めてこれらのウイルスを取り込んでしまうと、母子感染で赤ちゃんに障害が出る可能性があります。

編集部

食べ物にも注意が必要なのでしょうか。

香川先生

そうです。「妊娠中は生肉を食べないでね」と言われてますよね。それなのに、たまにはいいかな、貧血だし、なんて1枚だけレバ刺しを食べちゃったりするじゃないですか? でも、実際にたった1度食べて、トキソプラズマに感染し、お子さんに障がいが出てしまった女性もいるんです。
その女性はいま障がいのある子たちの生活を支援したり、母子感染の予防を啓発するトーチの会を運営されています。
知らなかった、わからなかった、自分がなるとは思わなかったじゃ済まないんです。

編集部

結構、軽く考えてました……。

香川先生

妊娠中にあまり怖がらせるといけないと思う一方で、リスクはきちんと理解してほしいです。
サイトメガロウイルス・トキソプラズマの母子感染について知ってはいても、「感染したら赤ちゃんに障がいがおこるとか、早期なら治療ができるなんて言ってなかったじゃん!」というのが当事者の声なんです。
趣味、子どもやペットとの触れ合い、食事、そういった日常のなかにリスクはひそんでいます。妊娠中に知らずに初めて感染してしまうと一生後悔が続くので、抗体検査をしたり、感染リスク因子を減らしたり、賢く回避してほしいです。

編集部

知らなかったら、と思うとこわいことばかりです。

香川先生

命の教育というか、若いうちから必要な情報が伝わらないと、自分を大切にできないと思うんです。

編集部

必要な情報ですか?

香川先生

たとえば生理。生理痛はつらくないですか? 「生理は痛いもの」「そんなに痛がったら出産なんてできないよ」なんて親や身近な大人に言われて、子宮内膜症とか月経困難症をがまんしている女性はすごく多い。

月経前症候群なども低用量ピルを上手に使えば軽減されますし、卵巣も子宮も刺激が弱い状態をキープできます。
それに、子宮内膜症についても、低用量ピルの服用すれば、毎月の炎症を抑えられ、お腹の中の癒着や痛みの緩和だけでなく、病気の進行そのものを防いでくれます。

編集部

低容量ピルにそんな効果があるんですね。

香川先生

望まない妊娠も防ぎ、産みたいときまで卵巣や子宮を休ませて、臓器の健康を維持することも心がけてほしいです。

それなのに、副反応への過剰な恐れや、当事者以外のオトナたちからの淫らになるというよくわからない意見(保護者の世間体や偏見)で、必要な情報が若い子たちに届いてないように感じます。

編集部

「望まない妊娠を避けるための避妊薬」としてのイメージが強くなってしまってますよね。

香川先生

その「望まない妊娠」もそう。望まない妊娠って10代が多いのかとうとそうじゃなくて、20代後半から30代で10万人位います。

編集部

そうなんですか。

香川先生

安全にコスパ良く妊娠する方法などの必要な情報が届かないまま大人になったからだと思います。
不妊治療を受けている50万人の人が1年間治療してもたった5万人しか生まれない。それなのに、同じ年齢層で10万人以上が中絶してるんですよ。社会的なコスパが悪すぎます。

編集部

自分の体を守るために、知識は大切ですね。