パートナーはどうすべき?

卵子凍結保存の専門家である香川則子先生
編集部

妊活って女性が主導で考えるケースが多いと思います。けれど妊娠は二人でするものですし、パートナーがやるべきことはあるのでしょうか?

香川先生

女性と同様、「そもそも産める体なのか」ということは知っておかないといけませんね。

環境汚染やストレス社会のせいで、世界的に精巣が小さくなってきているんです。
とくに日本人は、遺伝情報が濃縮された状態なので、生殖にコントロールがかかっていて、そもそも生殖能力が男女ともに低いんですよね。

編集部

へー!

香川先生

男性だって34歳以降、精子は老化します。海外の研究結果ですが、35歳~40歳の女性が体外受精を受けたところ、同年代のパートナーをもつ女性より、30歳未満のパートナーをもつ女性の方が出生率は3割も高かったそうです。
34歳までに妊活が難しい場合は、精子凍結もできますし、既婚者でしたら受精卵の凍結もできます。

それに、精液が出ていても精子がいない可能性はあります。妊活前に精液検査、性感染症検査はしてください。
あと、麻疹、風疹、おたふく、リンゴ病の抗体検査も!

もし精液検査に行きづらい場合は、自宅でセルフ検査できるキットを試してほしいですね。

編集部

男性もいろいろとやるべきことがあるんですね。

最後に

卵子凍結保存の専門家である香川則子先生
編集部

お話をうかがって、私たちが妊娠について「知らない」ことがわかり驚きました。

香川先生

セミナーを始めた当初は、「だって誰も教えてくれなかったんです」と言う女性がとても多かった。「この年齢だと体外受精しても産めないじゃん」「40歳で9割産めないなんて聞いてない」「50万円もする治療なのに」って。妊娠・出産に関するデータはあっても、そこにたどり着いて、自分ごとにするのが難しいんだと思います。

編集部

妊活しようって思ってから調べますからね。

香川先生

だから遅くとも中学生くらいからは、結婚や妊娠出産などを含む自分のライフプランを設計する授業や、いのちの授業として生物学的な基礎知識から卵子や精子が老化すること、不妊知識(男女共に35歳以降に子どもができにくくなること)やがん生殖(がん治療によって妊娠する能力が落ちる場合に卵子や精子や受精卵を保存できることを知る)について学ぶきっかけを何度も与えられる社会になるといいですよね。

それに安全な妊活(子どもを作る方法)についても費用や効率も含めて啓発する必要があります。そして、予防接種で唯一防げる子宮頸がんの存在を知って、若い世代の健康な子宮といのちを自分達の手で守っていってほしいです。

編集部

本当ですね。

香川先生

そして知識のほかに大切なのは、「今の子育て世代や結婚世代が幸せなモデルになること」。そしてそうなるように社会がサポートすること。

編集部

幸せなモデルですか。

香川先生

みなさん、結婚や子育てに対して色々な思い込みがあるように感じます。
離婚しちゃいけないとか、母乳で育てなきゃいけないとか。離婚したってそれは学びだし、生物的に初乳さえあげれば免疫はつくと証明されているので、ミルクだっていいんです。
思い込みに縛られない多様な結婚、育児スタイルを受け入れる社会になったら、みんなもっと生きやすく、幸せになれますよね。そしたら、若い世代も結婚や育児に夢が見られると思います。

編集部

なるほど。

香川先生

でも、そもそも結婚してもしなくても幸せになれますけどね。私も選択的シングルマザーとして、幸せにやっています。自立というのは孤立ではなく、依存先を増やすこと! たくさんの手をお借りしながら、パートナーとも子どもたちとも幸せにやっています。「孤育て」ではなく、「できない」「たすけてほしい」と言えるありがたい環境で、地域のみなさんと共に子育てしている喜びを日々感じています。

編集部

では、最後に「いつか産みたい」「まだ産みたいかわからない」という20代AM読者へのメッセージをお願いします。

香川先生

「産める身体の健康維持」がどんな選択肢も選べるという自由につながり、将来の妊活コスパも良いです。産みたいときになって産みたい人数の子を母子ともに安全に産めるように、毎日の小さな不安や不満を解消し、未来のために備えてください。
「日々の安心や選択できる自由を喜びに変えていく」努力を重ねられるように、「専門機関への相談」「検査」「予防接種」「卵子保存」「精子保存」サービスを活用して欲しいです。

また、子どもが体外受精でできなかった場合でも、里親とか養子縁組のシステムとか週末里親の制度とか社会的養護の仕組みもホントにたくさんあるので、それらも検討してください。

編集部

ありがとうございました。