合理的すぎたモテテクと変わり始めた恋愛観。今私たちがやるべきことは?(後編)

 わたしたちはいつの間にか、「尽くす女がいい」「清純じゃないとモテない」といった“恋愛の思い込み”に翻弄されています。
前編では、こうした“クソルール”が生まれた背景や規範意識に言及してくださった、大森美佐さん。では、社会の仕組みや規範意識を変えていくために、これから先なにが必要かを伺いました。

自由すぎると分からない!恋愛の「アノミー」状態

日本の恋愛規範についてインタビューに答える大森美佐さん 大森美佐さん

―― 規範意識が変わりづらい背景には、何があるのでしょうか。

大森美佐さん(以下、敬称略)

人はルールに則ったほうが行動しやすいからじゃないでしょうか。規範は、必要/不必要で捉えられるものではありません。規範の拘束力の強弱はありますが、むしろその規範がなぜ存在するのかを考えたほうがいいと思います。
今は、“恋愛のアノミー”状態。アノミーとは、規範の拘束力が弱まって、どうしたらいいかわからない状態のことです。フランスの社会学者が用いた概念ですが、これは恋愛だけじゃなくて、さまざまな社会現象を説明するのに援用されます。

―― あまりにも自由が与えられすぎると、どうしたらいいかわからなくなりますもんね。
ただ、著名人の不倫報道や事実婚報告に対して、自浄作用みたいに絶妙に様々な意見がでてきたように感じています。AMを運営して7年ですが、立ち上げ当初とは状況が変わってきたのも感じていて。女性の規範意識が変わってきたということでしょうか。

大森

報道で取り上げられている方は、とはいえまだ珍しいと感じるから話題になるのだと思います。ただ、今まさにTransitionの途中、過渡期で、着実に変わっているとは思います。70年代とは全然違いますし、結婚するまでセックスしちゃいけないと言う人はいないし。
ただ、セックスに関する考え方ひとつとっても、一個人の中で、両面あると思います。セフレがいる時期もあれば、真剣に交際したい相手に対しては、正当なプロセスを経てピュアな部分を見せることもあるというか。
柔軟に相手に合わせて対応していると思うので、一概に規範の拘束力が弱まったとも言えないし、逆に保守化しているとも言えないし、すごく複雑な状態だと思います。

―― 一人の中にもテンションがいろいろありますね。

大森

そのときの個人の置かれた状況に合わせて、自分にとって都合のいい規範を当てはめて正当化する部分はあると思います。