合理的なモテテクと変わりにくいジェンダー構造

大森

私が教える女子学生のなかには、専業主婦になりたい人が結構います。素直にそう思ってるし、それが幸せだと思ってる部分もあるんだと。実際、女性が働くのは大変なことも多いですしね。

―― 20代前半で婚活してる子もいると聞きました。楽しく仕事をしている人はもちろんいるんですけど、まだまだ目に見える部分では少ないですよね。
また、「モテテク」なども今も20代の女性の頭の片隅にいつもあると思うのですが、大森先生はどう感じていますか?

大森

モテテク、「さしすせそ」などですね。インタビューをしていると、「本当はやりたくない」「そんなの馬鹿らしい」と思っているけど、ただやればわかりやすく男性の見る目や扱いが変わるから、戦略的に「さしすせそ」をやってると。また、告白までのプロセスを見ても、男性に「言わせる」ケースがやはり多い。最後の告白だけは男性に任せて、女性から積極的に行動する例は少ないですよね。
ジェンダーの構造は、男女ともに意識の変化がないと、中々変わりにくい部分だと思っています。

――男性は男性で、今まで以上に「男らしさ」に疲れてきているし、女性は女性で引っ張ってほしいがまだ残っていますもんね…。

大森

そうですね。 夫婦の家事分担に関する研究(筒井 2014)では、夫婦がほぼ同じような条件で働いて、同じくらい稼いでいても、妻の家事時間が夫よりも週当たり10時間多いことが明らかになっています。それは、女性が「家庭の責任者」としてのアイデンティティを維持しようとする意識が働いているからだと考察されます。だから、そういう点を鑑みると、女性自身の“女性らしさ”という意識も関係しているのかもしれません。

―― 男女ともに意識が変わるように、ちょっとずつやっていくしかなく、誰のせいでもないんだっていうことが、よくわかりました。