社会が変わるには子どもに再生産しないこと

大森

ヨーロッパはどうして同棲が増えていったかというと、親からの自立意識がすごく高くて、親も子どもの面倒をみないからです。そうすると結婚そのものは重いけれど、同棲とか事実婚というちょっと緩い関係で一緒に生活したほうが、絶対経済的には助かるので、自ずと横のつながりが強くなります。
一方、日本は結婚しなければずっと家にいても特に咎められることはないですよね。だから、日本とか韓国とか台湾などの東アジアの多くの社会では、縦の親子間のつながりが強い。
18歳から家出てきなさいっていう社会と、結婚するまではいいですよって社会だと全然違います。

―― 面白いです! それは、18歳以降の意識や覚悟がずいぶん違うかもしれませんね。

大森

だから教育は大事ですよね。子供がどういう人間に育つか、その社会の成員になる――社会化というのですが――、その根本がいまと変われば、全然違う社会になるかもしれません。でも再生産していったら、同じことです。何も変わりませんよね。

――再生産してる人はまだまだいそうです…。

大森

さっきの「さしすせそ」の話もそうですが、結局そのほうがその人にとっては合理的なんですよね。
学校ではジェンダーについて学び、男女平等が唱えられていますが、実際の社会の行動としては、そのほうが成功経験もあるから、なかなか抗えない。そうすると再生産されてしまう。だから、親がどう考えてるかって、だいぶ影響されるんじゃないですかね。

――これまでの少し古びた日本のルールに、親の立場でTwitterに意見を発信する人も見かけるようになりましたが、もうちょっと広がっていくと変わるのかもしれません。日本人はどうしても右にならえ的なとこありますし。
急には難しいかもしれませんが、私たちは意見を発信しつつ、個人での再生産を避ける方法や、横のつながりの意識について、大切に考えていければと思います。

Text/AM編集部

大森美佐(おおもり・みさ)
お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科博士後期課程修了, 博士(社会科学)

参考文献
筒井淳也,2014,「女性の労働参加と性別分業:持続する「稼ぎ手」モデル」『日本労働研究雑誌』648:70−83.