私も、初めての一人海外は失恋がきっかけでした。
マレーシアのランカウイ島という、思いっきりハネムーンで行くようなリゾートに一人で行きました。
自然の豊かな島で、部屋にはヤモリが勝手に上がり込んでいるし、「窓を開けると、野生のサルが入ってくるので開けないで下さい」と言われるし、油断すると廊下でヘビを踏みそうになるので、失恋したからといってぼさっとしているわけにはいきません。
敵は野生……常識の通じる相手ではありません。
ある夜、ホテルのテラスでぼっち丸出しで食事をしていたところ、ホテルの従業員の女の子が「日本語すこしはなせます」と話しかけてきてくれました。
彼女は「宇多田ヒカルが好きです。いちばん好きな歌は『First Love』です」と言って、なんとその場で宇多田ヒカルをちょっと歌ってくれたのです。
You are always gonna be my love……。
切ない表情で歌うその子を見て、私は「失恋は世界共通なんだ!」という事実に気づきました。
失恋したのは私だけじゃない、生まれた国も人種も違うこの子も、失恋の痛みを知っている……。
「一人じゃないんだ!」「みんなこの痛みを乗り越えて、けなげに生きているんだ!」
と思うと、全人類が愛しく思えてきました。
翌日はホテルのスパでアーユルヴェーダを受けてチャクラが開き、若干スピリチュアル過剰ながら、身も心もツヤツヤになって帰国しました。
まぁ、旅先でセンチメンタルな気持ちになって、WiFiすらない離島で、ADSL以下のスピードのホテルのPCから、日本語入力のしかたがわからずローマ字と英語が混じった怪文書のようなメールを元彼に未練がましく送りつけたりという情けない副産物もありましたが、あの旅のステキな思い出は今も色褪せていません。
「失恋したら、飛行機に乗れ」。
私が積年の失恋経験をもとにたどり着いた言葉です。
一度は信じて、ぜひ乗ってみてください。
プロフィール
雨宮まみ
ライター。九州生まれサブカル育ち。守備範囲は「セックス&自意識&女のあれこれ」。
赤裸々な半生を綴った『女子をこじらせて』(ポット出版)は全国のこじらせ女子に大きな影響を与える。
現在、「女子」を語らせたら、この人! という5人を迎えての対談集『だって、女子だもん!!』(ポット出版)が絶賛発売中。
ツイッター:@mamiamamiya