男性を肯定して愛撫することから始めよう
大泉:そもそも、母性って何だと思います?
二村:それは、相手を肯定すること、甘やかすこととは別です。
なんでもかんでもやってあげて、自分なしでは生きていけなくすることでもない。
大泉:母性にはそういう負の部分もあると思いますけどね。
二村:悪いマザコンを作る母性。でも、男の人をいい形でかわいがるのは、女の人にとって、楽しいことだと思うんだけどなぁ。
大泉:ちょうど、この間、このサイトに連載している官能小説のレビューコラムで、母性について書いたんです(ファム・ファタールのススメ)。内藤みかさんという作家さんが書かれた『やわらかバスト』という作品なんですけど、そこに「愛をあげたい」ということ自体が欲望であると書かれていて。そうなるとラクですよね。女も男も満たされる。
二村:そう、愛の綱引きをしなくて済む。ちょっと理屈っぽくなっちゃうけど、さっき、セックスはコミュニケーションだと言ったけど、経済もコミュニケーションなんです。
「お金っていうのは言葉である」という経済と哲学を結びつけた考え方があって。
だからまわさないといけないんだ、と。
愛情もそうだし、お金もそうだし、パスを渡しやすい社会がいい。
まず最初に、自分が人に与えられる社会のほうが上手くまわっていくんだけど、
でも、今はお金は一極集中で溜めていくほうだし、恋愛は「愛されたい」が出発点となっている。
でも「愛して」あげたら、その相手は誰かを「愛する」ようになる。
その誰かは自分か別の他人かはわからないけど、とにかく人からパスを受け取ったら、誰かに渡したくなるはずなので、どっかで止まるということはない、だから愛情は与え続けたほうが自分にも戻ってくる。
けれど、なかなかみんな飢えている世の中では、それが難しい。
だから、それを解決するために、女が男を愛撫するところからはじめよう……ってことを僕は伝えたいかな。
【完】
Text/大泉りか
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