本作のヒロイン、笹沼ひろみはごく平凡なOL。その風貌は

 鏡の中の娘は、自分では見苦しくないとは思うが、さりとて人の目をひくような美貌でもなく、「何か個性が不足している」と不満を覚えているいつもの顔だ。  それは体つきもそうで、背は高くもなく低くもなく、太ってもないし痩せてもいない。すべてが標準的なサイズだが、顔と同様、どこにもアピールするものがない――と自覚している。(『純白のガーターベルト』P11L6-10)

 と描かれている通り、いうならば、どこにでもいる、どちらかといえばややおとなしめの女性です。一方で、やや大胆なところもあり、軽い気持ちからとある高級ランジェリーショップの『リビングドール』のアルバイトに応募します。

 『リビングドール』とはランジェリー姿でショーウィンドウの中に入り、その魅力を伝える『生きたマネキン』。しかし、自ら応募してみたもの、いざ面接の段になり怖気づいてしまうひろみ。しかし、ランジェリーショップのマダム、矢野笙子は、そんなひろみにこう告げます。

「あはッ、そんなにコンプレックスを持つことないのに。マネキン人形は人間の理想の体型で作られているけれど、現実にはそんなサイズの女性は日本にはいません。
だから存在しないベスト体型のマネキンを陳列するのは本当はサギよね。錯覚させて売っているわけだから。
私はそういうのがちょっとイヤなの。リビングドールのショーを考えたのも、実際の生身の日本女性が着けたら、海外のランジェリーはこういうふうに見える――と分からせたかったから」
(中略)
「あなたのスリーサイズ、身長、体重は、日本の若い女性のほぼスタンダードなものよ。
上を向いているからコンプレックスを覚えるけど、そんな必要はありません。
あなたは脱いでもらわなくても、体型と肌のきれいさだけでもう九十パーセント合格ね」
(『純白のガーターベルト』P21L2-12)

 どうですか。ちょっと勇気が出る言葉ですよね。
さすがは女性の美をバックアップするランジェリーショップのマダムです……が、ここで少し考えてみてください。
この物語の中では、女性が主張しているといえども、実はこの文章を書いているのは男性作家である館淳一氏。
これって、日本人女性にだってセクシーな下着が似合うんだよ……というメッセージだと思いませんか?
これを読んだら、ちょっとだけ、股を出してレギンスを履く勇気が出てきた気がします。

 リビングドールとしてデビューすることになったひろみが『ガーターベルト』を身につけることで何が起きたか……後編でお楽しみください。

Text/大泉りか

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