「ヒモを養いがちな女の子」だった私は一生分のマリアを使った/根本宗子

劇作家・根本宗子さんの主宰する劇団『月刊「根本宗子」』による『今、出来る、精一杯』が12月13日(金)より上演されます。劇のテーマのひとつでもあるヒモとの恋愛について、根本宗子さんのコラムをお届けします。

舞台のモチーフのひとつ、「ヒモとの恋愛関係」

カレー沢薫のカレーなる夫婦生活連載バナー 根本宗子さん

「ヒモ男」と聞いて皆さんはどんな人を想像しますか?

・家賃を払っていない
・働いていない
・全て彼女、もしくは不特定多数の女性に生活費を出してもらっている

などなど思いつく「ヒモ男」の印象はそれぞれたくさんあるのではないでしょうか。
私は「ダメ恋愛を描く女流劇作家」というイメージを持っていただくことが多く、20代前半は自分では「ダメ恋愛」を書いているつもりそんなになかったんですけど、今年30歳になり、周りからそう言われてきた理由はなんとなくわかって来たし、冷静に考えて「彼氏が実家帰るって嘘ついて家に帰って来なかった日に、歌舞伎町でコンドームとローション買ってたことが後日レシートでわかり大喧嘩になったら、その彼氏が『レシートは拾った!(泣)」と泣き出して泣きたいのこっちなのに何先に泣いてんだよ」と思った話とか、普通の恋愛話として話していたけど、十二分にダメな恋愛の話ですよね。
私の恋愛面白エピソードを書き始めるとそれだけで2万字とかになりそうなので、それはまた別の機会にしますが、まあこのような恋愛を繰り返す20代前半を過ごしてきたわけなんですよ。今となっては笑えるので楽しい思い出になっているんですが、現在、23歳の時に書いた戯曲「今、出来る、精一杯。」の稽古をしていて、当時の恋愛を思い出す機会が増えていて。
「人と関わっていくこと」について23歳の私が考えていたことを書いているんですけど、人との関わり方を描くにあたり、自分の実体験をモチーフにしている。大きく分けて3つのモチーフがこの作品の中に登場してるんですね。

1つ、私が怪我をして車椅子生活を送っていた期間の他者と自分

2つ、自分の人生に巨大な影響を与えてくださった方が亡くなってしまった時の想い、そしてその事を他者に理解してもらえない気持ち

3つ、ヒモとの恋愛関係

とても「深い」話が書けそうな1、2に対し、3つ目のライトさ。
そのためこの作品についての取材を受けると大体クローズアップされるのは1、2について。私もそちらの方を話したいし、取り上げてもらえてありがたい。が、「ヒモ」との恋愛の話だってすれば舞台に興味持ってくれる人がいるかもしれないし、私が話す事で、世の中の「ヒモを養っている女の子」が何らか救われたり、もっとそのヒモを好きになったり、別れる決意をしたり、喧嘩をしたり、「何か」になればいいなと思ってコラムを書かせてもらおうと思いまして書いています。だからヒモ、ヒモ、連呼しておるわけです。