江戸期の性典物(性のハウツー本)を読むことは完全な趣味なので、「わたしは古典に触れている!」「古典がすらすら読めるのよ!」というアピールをするつもりはない。むしろお風呂上がりにパジャマに着替え、寝るまでのくつろぐぎ時間に布団の上でゴロゴロとマンガを読むといった感覚に近い。ただの純粋なスケベ心と好奇心なのだろう(笑)。
しかしスケベ心とはいえ、性典物を読んでもムラムラはへその下にはやってこない。脳が爆発的な快感を得ているのだ。わたしの脳汁があふれる対象が偶然、江戸時代の性典物だっただけなのだ。
当時の人々はどのように性の営みを豊かにしていたのか。どのように触れ、触られ、わたしたちと同じようにオルガズムを得ていたのだろうか。
そして、現代の人々が江戸期の春画に魅了される理由は何なのだろうか。
知りたい。知りたい。もっと知りたい。わたしは全く研究熱心なんかじゃない。
亀頭のまわりにまれに見かけるブツブツ、江戸期に呼び名があったなんて想像もしなかったでしょう?(笑)。『女令川趣文』によると、瓦葺の屋根を意味する「いらか」と言うそう。パソコンで検索すると、その例え方のうまさに笑ってしまう。現代では「フォアダイス」という名称のようですね。
そういう実生活に直接は関係ないけど、脳汁と好奇心が溢れ出すのが性典物だった。
名前がかっこよすぎる体位を紹介
今回はセックスの体位を3つご紹介。
ご紹介する本は『新撰古今枕大全(しんせんこきんまくらたいぜん)』というハウツー本。1760年代に出版され、恋愛のタイプ、性体験記、恋愛結婚の必勝法などが書かれた全6巻の性典物です。
まず、これらの体位の名前からどのような姿勢で交わるのか想像してみて欲しい。
みなさんに親しみのある体位もあります。
(1)魚鱗法(ぎょりんほう)
(2)雀翼法(かくよくほう)
(3)竜虎法(りゅうこほう)
名前だけだとどんな体位なのか全く想像がつかない……。
挿入中は相手の気持ちの状態にも気を遣う〈魚鱗法(ぎょりんほう)〉
では最初に、「魚鱗法(ぎょりんほう)」についてお勉強しましょう。
女を仰き臥しめ、其股をひらき、男其間により腹の上にかかり臥てまづ口をすひ女より気ざし腰をもちあげ玉茎をうくべし。男ハ玉茎にて玉門の合せめを撫でて、うるほうにしたがつて、しづかに玉茎を入て女の淫念ははなハだ動じて腰をつかへかしとおもふ。顔色鼻息言葉づかひ目もとなどに、心を付て居直り右の如くす。
〈現代訳〉
女性は仰向けになり股をひらく。男性は女性にかぶさるような姿勢になり口を吸う。
女性の気分が高まってきたら男性は男根で相手の性器をなでる。女性が濡れてきたらゆっくり挿入する。段々と女性の気分も高まり男性に腰を動かしてと思う。
女性の顔色、鼻息、言葉遣いや目もとなどを気にしながら行うこと。
「魚鱗法(ぎょりんほう)」は現代でいうところの正常位のようだ。
しかし女性が仰向けになり男性が挿入するということだけでなく、挿入のタイミングや挿入中に女性の顔色、呼吸や言葉遣い、目もとの様子まで気にかけるという注意事項まで記載があるのはすごい。
女性は気分が悪くなっていないか、交わりを楽しんでいるかを行為中も気にかけること含めてこの体位が完結するのかもしれない。
説明中にあった「男ハ玉茎にて玉門の合せめを撫でて」の文を読み、「あ!家にも似たこと書いているハウツー本あったな」と探すと見つかった。
上図のように亀頭で陰戸の口元をこすったり、撫でたりするとどんな女性も取り乱し気持ち良くなると書いてある。
こういう文を読むと「うーん、自分は気持ち良いと思ったことないな」とか「わかる!わかる!わたしこれ好き」など様々な意見が出てきておもしろい。
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