押し付けるものではない性癖、マッチしたら最高だけど!

待ち合わせ場所は、経費節約のために私が宿泊していたおんぼろホテル。私がロビーに降りると、ソファーにちょこんと座って待っていた彼はまたすっと「起立」して迎えてくれました。
夜なのでサングラスを外していた彼は、昼よりエレガントでかっこよくて…でもこの人きっとロックとかやっててお金ないんだろうなぁ、そもそも飯代持っているのかねぇ~なんて勝手な憶測を抱きつつ、二人で彼の車へ向かうと……なんと車はクラシックなヴィンテージカー、車内のシートなどのインテリアは全て『GUCCI』。お食事のエスコートもめっちゃ紳士でロマンチックなデートでした。

なんと彼は映画の脚本家でスーパーセレブだったのです!
お家はハリウッドの丘の上モダンなインテリアの一軒家に一人暮らし。「男爵みたいな暮らししとるやんけー」とビビりん毛ボーボーです。

そんな彼になぜか気に入られ、遠距離でお付き合いすることになって3カ月位したある日。
プレイ中にいきなりビンタを食らったんです!
「なにするんだよー」っと思わずキレそうになったけど、とくに痛くないビンタだったので、その時は性欲に負けてしまいそのままプレイ続行。だけど、やっぱりモヤモヤは消えません。そんな状態で付き合い続けていたある日、彼とデートしてからお家に行くと、寝室のドアにゴッツい手枷&足枷がチェーンでぶら下がってました。彼は「ジャーン!」的なジェスチャーまでしてきて、なんだかとっても嬉しそうでした。

とりあえず何事も経験と思って完全拘束プレイしたんですが、拘束プレイしてる私を冷静に傍観しているもう一人の自分が常にいて、なんとも他人事と言うか、気分は盛り上がらず興奮もしないプレイでした。
お洒落さんな彼だから、これはお洒落なプレイの一環だったのか、はたまたお洒落なインテリアの一部なのかもはや判断不可能。そしてビンタの一件が私の頭の中にフラッシュバック。

あぁ、なんだろう……。
走馬灯のようにこの「夢のようなセレブとの交際」「ビンタ」「彼の優しさ」「拘束プレイ」「カッコイイお顔」「手枷」「お洒落なセンス」「足枷」「GUCCIの車内」「サディストなの?」「居心地の良いお部屋」「今までの楽しい時間」……諸々を天秤にかけます。

出てきたジャッジは、「どんだけ愛していても、私にはM女はできないな』ということで彼とは別れてしまいました。

残念ながら性癖の方向性が違いましたが、サド男爵は見た目も人間的にもとても素敵な彼だったので、きっとおばあちゃんになって死ぬ間際に「あいつイイ男だったな」と思い出すであろう男の一人となりました。

特殊な性癖は相手を選ぶもの。そして性癖は相手に押し付ける物でもないので、相手の気持ちも大事にしたいですね。逆にいえば、性癖もマッチすればとても良いお付き合いになるのでしょう。

そんなSMですが、食わず嫌いもどうかと思いますので。このコラムを読んで気になった方はまずは、初心者向けのボンデージスターターキット7つ道具セットがおススメです。

今回はそんな「サド男爵と私」についてしたためました。
次回は「前立腺と私」について書きたいと思います。