「女優と目が合う」という経験
 chad rogers AV女優(男優)とは、不思議な職業だ。
 風俗嬢、キャバクラ嬢、あるいはホスト、レンタル彼氏などは、目の前の客に対してサービスを提供する。
 しかし、AV女優の場合、自分のサービスにお金を払ってくれるのはセックス相手のAV男優でもなければ、撮っているカメラマン、監督でもない。セックスの現場にいない視聴者が客なのだ。
  ゆえに、日本の男性向けAVは、あたかもAV女優とセックスしているかのように視聴者を錯覚させる技術を独自に磨いてきた。
 その技術の1つが、初回をはじめとして何度も指摘してきた、「奥行き」の画面構成である。
 つまり、男優の目とカメラの目(=視聴者の目)を一体化させることで、男女を手前-奥の関係に配置し、男性視聴者の視線が女優だけを貫くようにしているのである。
  だが今回論じたいのは、視聴者の視線ではない。被写体、つまり女優の視線だ。
 男性向けAVでは、ことあるごとに女優がカメラ=「こちら」を向く。そして視聴者と視線が交差する。
 この「女優と目が合う」という経験を、分析してみることにしよう。
 なお、女性向けAVの被写体の視線については次回扱いたいと思う。