いざ行かん熱海秘宝館――女性も楽しめるエロ・アミューズメントパークとして

日本に現存する唯一の秘宝館

服部恵典 東大 院生 ポルノグラフィ 研究 秘宝館 InSapphoWeTrust

 8月も下旬。お盆休みも終わってしまったころだろう。せっかくの夏なのだからどこか旅行に行こうと思っても、長い休みはとれないかもしれない。
しかも今年のシルバーウィークは3連休しかないらしく、遠出のチャンスは今後もしばらくなさそうだ。

 ならば、熱海はどうだろう。
短い休みしかとれなかった人でも、思い立てば新幹線ですぐ行ける。
昭和バブル期の旅行地のイメージがあるかもしれないが、映画やテレビドラマのロケ地として使われることが急増した結果か、最近は観光者数がV字回復して14年ぶりに300万人を超えたという。

 観光資源として、ロケ地の聖地巡礼や温泉はもちろん、日本で最も新しい城である熱海城や、トリックアート迷宮館、離島の初島、そして何より日本に現存する唯一の秘宝館があるのである。

 みなさんは「秘宝館」を知っているだろうか。
1970年代前後に現れた、性をテーマとした「おとなの遊艶地」であり、アングラでディープ、滑稽でユニークな施設としてかつては温泉地につきものであった。
性器をかたどった民俗的物品などのコレクションのほか、ハンドルを回すとセクシーな蝋人形のスカートが風でめくれたりする来館者参加型の展示も多いのが特徴である。

 画像があればイメージも湧きやすいだろうが、あいにく「熱海秘宝館」は撮影禁止である。
ウェブ時代の今あえて情報統制を敷くことによって、マニア感と、行かなければ味わえないローカルな魅力を出そうという意図なのかもしれない。

 ……はずなのだが、意外と写真まみれのレポート記事がネット上に転がっている。嗚呼、その不徹底さも味がある。
(asoview!TRIP「熱海秘宝館を体験してきた!撮影禁止の内部を紹介」

 さて、秘宝館はかつて北海道から九州まで2、30ほど存在していたらしいが、不景気や、団体旅行というスタイルの衰退のせいか客数が減り、今では熱海にしか存在しない。
本記事が多くを負っている、妙木忍『秘宝館という文化装置』が書かれた2014年2月(出版は3月)には、佐賀県の「嬉野武雄観光秘宝館」と栃木県の「鬼怒川秘宝殿」も残っていたが、それぞれ2014年3月、12月に閉館してしまった。
最後に残ったのが「熱海秘宝館」だが、ここですらいつまで残っているか分からないのだから、気になるならば思い立ったが吉日である。さあ行こう。行くしかない。

 なぜ私が秘宝館をこれほど推すのかというと、秘宝館はそのイメージとは裏腹に、昔も今も女性が楽しめる施設だからである。
次節から、「女性も楽しめるエロ・アミューズメントパーク」という点を重視しながら論じていこう。