突然呻き声をあげた夫に深く貫かれた妻/ミステリアスな滞在者『楽園の罠』(1)/AM官能小説

 幻冬舎×AMが特別コラボ!危険な官能小説をお届けします。

【あらすじ】
南の島へ夫と旅行に来た彩夏は、ホテルの近くのバーでミステリアスな魅力のある駿に出会う。夫に満足していなかった彩夏は次第に駿に惹かれて、彼の部屋を訪れるが、彼女を待ち構えていたのは、いままで経験したことがない恥辱にまみれた危険な罠だった。

幻冬舎 楽園の罠 真野朋子 AM 小説

第1回 ミステリアスな滞在者

 まったくうんざりするような雨だ。バケツをひっくり返したような猛烈な雨が、もう1時間近く降り続いて、少しも弱まる気配がない。南の島のスコールにしてはずいぶん長いような気がする。彩夏は外を見ながら小さくため息をつき、薄くなったフローズン・マルガリータをまたひとくち飲んだ。

 滞在中のホテルからわずか徒歩5分の距離だが、傘がないのでホテルに着く頃には全身ずぶ濡れだろう。部屋に戻るだけなのでそれでもいいのだが、特に急いで帰る必要もないし、もう少しひとりでいたかった。

 広めの店内は半分以上席が埋まっていたが白人の客がほとんどで、みなこの突然の大雨のために足止めを食っている。すっかり長居を決めこんで、他のグループの客とおしゃべりしたり、奥のビリヤードに興じたりしていた。
「よく降るなあ。そろそろ止んでもいい頃なんだけど……」

 ふいに日本語で話しかけられたので、驚いて声の方を振り返った。ずっと雨を気にして通りの方向ばかり目をやっていたが、男はいつの間にかすぐ隣の席に座っていた。
「驚かしちゃったかな、失礼。僕はずっとカウンターの方にいたから」

 麻のシャツに半ズボン姿の彼は、よく日焼けした小麦色の肌に白い歯が映えた。
「……ほんとに、よく降りますね。そちらもRホテルにお泊まりですか?」
「そうですよ。この店はあのホテルの客でもっているようなものだ。ホテルでばかり飲み食いしているとけっこう高いし、第一飽きるからね」
「ですよね。実はそのことで夫とちょっとした口論になって、私、ひとりでここに来たんです」

 彩夏はナンパされることを懸念して、早めに夫という言葉を使った。もっとも彼の雰囲気や口調からして、そんな心配は余計な気がした。
「Rホテルのレストランはどこも値段の割にそんなに美味くないでしょ。あ、インド料理の店だけはけっこういけますよ」
「あら、そうなんですか。入ったことない……ていうかまだ来て2日目ですけど」
「僕はもう1週間近くになるけど、そろそろ飽きてますよ」

 彼は妻が休暇の予定をたててこの島に決めたのだと言った。さまざまなアクティビティやマッサージなど積極的に行動している妻とちがって、彼は休むことが目的で来たのだが、早くも退屈しているのだと話した。
「私と同じです。うちも夫の方がアクティブで、せっせとダイビングに行ってます。それで疲れたからって、夕飯はホテルですませたいって言うもので。さっそくケンカ」
「うちのはスパの予約があるからって、ここで食事した後さっさとホテルに戻ったんですよ。僕もいっしょに戻っていれば雨に降られなかった」
「ほんとですね」
「でもこうしてあなたと話せたから……」
「時間つぶしになりました?あ、少し小降りになってきましたよ、雨」
「もう一杯だけ付き合いませんか?」

 彩夏をじっと見つめた目は、とてもNOとは言えない引き込まれるような力があった。マルガリータを飲む間に、彼は駿と名乗り、自分の部屋番号と携帯の番号を教えてくれた。彼が滞在しているのはビーチに近いプライベートプール付きのヴィラだった。

 グラスが空になる頃、雨は完全に止んだ。

 その夜、彩夏は夫に抱かれながら、駿のことばかり考えていた。結婚8年目、子どものいない夫婦のセックスなど何の新鮮味もない。場所でも変われば何かしら刺激になるかと期待したが、相も変わらずお決まりのパターンで工程が進んでいく。前戯として首すじや胸に唇を這わせ、ほんの申し訳程度に乳房への愛撫も。

 彩夏がもっと続けてほしくて胸を突き出しても気づいているのかいないのか、さっさと次の段階へ進んでしまう。早くも膝を割ってきて侵入の準備だ。夫は、面倒なことはできるだけ手短にすませ、自分の目的が果たせればそれでいいのだ。
「待って、もう少しゆっくり……」
「無理。待てないよ。ゆうべもお預けだったんだからさ」

 フライトの疲れで早々と眠ってしまった彩夏に不満があったようで、夫は朝から少々機嫌が悪かった。妻のリクエストに応えることはなく、のしかかって下半身を押しつけてきた。

 結婚前の交際期間も含めるともう10年間、同じモノを受け入れている。すっかり馴染んでしまったのか、多少無理があっても痛みも感じないようになっていた。
「うっ、全部入ったぞ……」

 後はひたすら上下運動を繰り返すのみだ。時折スピードアップしたり、また緩慢な動きになったりと強弱をつけながら。しかしその変化はあくまでも自分のための調整で、相手のことを考えてではない。

 彩夏は夫が単純な抜き挿しを繰り返している間中、駿のことを考えていた。よく日に焼けた肉体を見てみたいし、この手で触れてみたい。ほどよい筋肉質の体と滑らかな肌を持っているにちがいない。上に乗って必死で腰を使っているのが夫ではなく、もしも彼だったら……小刻みに上下する彼のヒップを抱えこむように脚をしっかりクロスさせ、自分も彼のリズムに合わせて自然に腰を使っているかもしれないのに……そう思った瞬間、夫は突然呻き声をあげて二度三度と深く突いてきた。いつもと同じ、瀕死の動物の最期の叫びのようだった。

 下半身の動作はぴたりと止まったが呼吸は激しかった。ずっしりと重い汗ばんだ体は、肉柱がすっかり萎えて自然に抜け落ちるまで彩夏の上に乗ったままだ。妻が一刻も早く抜け出したがっているとは知るはずもない。

【つづく】

Text/真野朋子
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