相手を許せずに苦しんでいるのは他の誰でもなく自分自身である。
 それならば、許すにはどうすればいいのだろうか。
 全てを忘れようとしても人間は憶えている生き物だ。
 忘れたい嫌な出来事ほど記憶の中に深く刻まれる。
 たとえ一時的に忘れられたとしても、些細なきっかけで記憶が鮮明に蘇ることもある。
  そして、過去は何をしたところで変わらない。
 相手が謝ったところで、罰せられたところで、罪を償ったところで、それで過去がなくなるわけではない。
 結局、相手を許すという選択は自分自身に委ねられている。
 昔の男を許せずに醜い姿を曝け出した自分は、まさに落とし穴の中でじたばたしている状態である。
  いくら過去に傷つけられたからって、相手に失礼な態度を取るような人にはなりたくない。
 できることなら、常にリスペクトと思いやりを忘れない人でありたい。
 それが自分の目指している場所である。
  過去の落とし穴にいつまでもいるのなんて嫌だ。
 だから、相手を許す。
 それは自分のための選択である。
  そんな頭の中のやり取りを終えた頃、目の前に美味しそうなアップルパイが現れた。
 ちょっと溶けたバニラアイスまで添えてある。
 フォークを握るのをぐっと堪えて、まずは注意してくれた友達に返信した。
「ありがとう」
Text/キャシー
 次回は <セックス・ケミストリーという謎の領域>です。
次回は「セックス・ケミストリー」についてのお話。そもそも、【セックス・ケミストリー】とはどのような言葉なのでしょうか。皆さんはご存知ですか?
- 1
- 2
 
         
                    
                  