子供の頃から小銭を握って一人で近所を散策するのが大好きだった。
古本屋の100円コーナーで面白そうな漫画を漁って、駄菓子屋でうまい棒とジュースを買って、公園の芝生に座って日が暮れるまでまったりした。
自分からすれば自然なことだったが、周りからよく心配されたこともあった。
一人っ子だから性格が歪んだと思われることも少なくなかった。
友達と一緒に大はしゃぎするのが嫌いだったわけじゃない。一人の時間も大切だっただけだ。
今になってもそれは変わらない。
財布が少し重くなって、行動範囲も広くなったが、心に抱いた好奇心は子供の頃と同じだ。
可愛い家具屋やギャラリーを眺めながら、美味しそうなデザートがあるカフェで小腹を満たして、疲れ果てるまで街歩きをする。
メールや着信は全部無視だ。そんな一人の時間が自分を幸せにしてくれる。
恋愛をして、同棲をして、愛犬の世話までしているとそんな時間を持つ機会が驚くほど減る。
平日は仕事に追われながら夕食を用意するだけでいっぱいいっぱい。
やることを全部を終えた頃には寝る時間になっている。
せっかくの週末は平日にできなかった家事をしながら、二人で時間を過ごすことが多い。
忙しくてなかなか会えない友人とコーヒーを飲みに行ったり、犬をお風呂に入れたりしていると、あっという間に日曜日の夜になってしまう。子供の頃の有り余った時間はどこへ消えてしまったのだろう。
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