キャシー
きしむベッドの上で優しさを持ちよって抱きしめあえば、相手の体臭に気付くことがある。
こんなに距離が近いと半ば強制的に嗅がされる。
汗のニオイだったり、髪の毛のニオイだったり、口や股間のニオイだったりと、人間は様々な体臭を全身から発している。
見たくないものは目を閉じれば済むが、臭覚は思い通りにシャットダウンできない。
もちろん、体臭が必ずしも悪臭だというわけではない。
マルチカルチャーなトロントでセックスに励んでいると、人種とニオイにまつわる噂をよく耳にする。
インド人はカレーのニオイがする。
中国人や日本人は醤油のニオイがする。
白人は肉のニオイがする。
それが単なる人種差別的なステレオタイプだと最初は思っていたが、いざ違う人種の人とセックスをしてみると確かにニオイが違うことに気付いた。
日本にいた頃は日本人としかセックスした経験がなかったから、ニオイの違いなんて気にしたこともなかった。
シャワー浴びた後もほんのりとスパイスの香りがするインド人のデート相手を抱きしめながら、自分は醤油のニオイがするんだろうかと考えてしまった。
今の彼氏とは交際してもうすぐ5年になる。
付き合い始めたばかりの頃、彼からはいつもニンニクのニオイが漂っていた。
ニンニクをたっぷり使った料理をよく作っていたのだろう。
きっとそれで衣服にもニオイが移ったのかもしれない。
相手の気持ちを傷つけてたくなかったから指摘はしなかった。
ニンニク好きの自分にとって別に気に障ることでもなかった。
ところが、ある日その彼氏からこんなことを言われた。
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