次のコラムは何について書くのかと聞かれたので、こう答えた。
「タイプじゃない人と恋に落ちたり、セックスする秘訣よ!」
相手は戸惑った。予想通りの反応だ。首を傾げながら、その人は当たり前のようにこう返した。
「なんでタイプじゃない人とセックスする必要があるの?」
タイプじゃない人とは付き合わないし、セックスもしない。
そんな鉄板ルールにケチをつけるなんて、キャシーはよほどのひねくれ者かコラムのネタが切れて困っているのだろう。
そう思われても仕方ない。
しかし、それを承知の上でケチをつけてみよう。
日本のゲイコミュニティに足を踏み入れて間もなかった頃、とある文化にとても違和感を覚えた。
熊専とか、デブ専とか、ガリ専とか、外専とか、特定のタイプしか好きにならない人がたくさんいて、白黒ハッキリと性的対象になるかならないか線が引かれていたのだ。
トロントのゲイコミュニティではそれに加えて、白人専やアジ専と人種でも線を引かれるようになった。
違和感は増すばかりだ。様々なタイプの人や人種に惹かれる自分は少数派だった。
一応、「誰専」という言葉もあったが、どちらかといえば誰でも見境なく好きになるという意味合いが強くて、なんだか自分のあり方にフィットしなかった。
今、ティンダーというアプリがとても流行っている。
社会現象と呼んでも過言ではないほど、新たなデート文化を形成している。
使い方は簡単だ。
スマホの画面に現れる相手の写真を見て、気に入れば右にスワイプして、興味がなければ左にスワイプする。
それを繰り返して、両思いの相手を見つけるのだ。
そのアプリを初めて手にした時、ゲーム的な楽しさにワクワクした。
しかし、なんとも言えない悲しさも感じた。
相手に対して好きか嫌いかでしか反応できないなんて、自分の価値観からは遠く離れていた。
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