気を取り直して、夫婦でマッサージ
まずはキャンドルを灯し、強制的にセクシーな空間を演出した。そして夫の手を取り、手のひらからマッサージを始めた。
なぜ手から始めるかというと、手や指の神経は大脳と密接に繋がっていることから『手は第二の脳』とも呼ばれているからだ。
私は夫の第二の脳に直接「僕は素晴らしいパートナーをもって幸せ者だなあ」と刻むべく、ローションを絡ませて優しく揉んだ。スマホで疲れているであろう親指の付け根や、恋人つなぎのようにして指の間を、擦るようにゆっくりマッサージした。
なんとなく肌がいつもより密着する感じがして、手のマッサージだけでも充分に官能的だ。
夫もそう感じているらしくFacebookよろしく「いいね!」を連発していた。
親指の付け根をほぐすと「いいね!」
手首から肘のリンパを流せば「いいねえぇ!」
手を重ねて指同士をしごくように滑らせれば「いいね……!」
などと、最小限の語彙でも抑揚を絶妙に変化させてマッサージの心地よさを伝えてくれた。
マッサージの最中は明らかにご機嫌で「グレープフルーツのいい香りがするね」なんて言ったりしていた夫であったが、後で説明書きを読んでみると「オスモフェリン」を香りに配合していたことを知った。
普通あまりピンとこない成分だが、私は高校生の頃に片思いしていた大変筋肉質な教師を思い出していた。
彼は元専修大学ボディービル部で当時ベンチプレス県内2位。倫理の教師だった。
当時私は、修学旅行で行ったサンフランシスコにて彼の土産にボディービル雑誌を買ってきたことがあり、その雑誌でテストステロンブースター(男性ホルモンの分泌を活発にさせるもの)として紹介されていた「オスモフェリン」の記述を翻訳したことがあったのだ。
好きな人と話したいがために必死に辞書を使って、「先生! オスモフェリンを筋トレ20分前に嗅ぐと、テストステロンの分泌が促され、より筋肥大に繋がるそうです!」などと解説していた記憶がある。
夫を見て、あぁ男の人って本当にローション好きなんだな~と漠然と思っていたのだが……男性の心理を研究し尽くして開発された入浴剤という事実にとても納得した。
ちなみにこの後、私もお返しに足のマッサージをしてもらったのだが、不思議とオイルなどでマッサージするよりも触られているという感覚が強くなっているような気がした。
とろとろのローションが肌と肌の間にまとわりついているだけで、お互いの感触をいつもより楽しめていたように思う。
そして最後は、
④ 溶解剤をローションに入れて混ぜて溶かして終了
ちゃんと溶かしてから流すので、排水溝が詰まったりすることはなかった。