部屋に入り、彼女は心配をし始めた

「204」の部屋のベッドに座るとさっきまでの酔っ払った弘美さんは完全に素面に戻っていた。「ニノミヤさん、なんなの、さっきの。あー、一気に酔いが醒めた」と言うと、普段はすぐに全裸になる彼女が饒舌に喋り始めた。そして、このホテルは様々な管理がなっておらず、隠しカメラがついていて行為の様子まで撮られてしまうのでは、と心配をし始めた。

「そうだ!」と彼女は言い、「どうせ隠しカメラはベッドが映る場所にあるはずだから、ベッドでヤらなければいいんだ!」と妙案を出した。

かくして僕らはベッドの上にある掛布団を床に敷き、枕も置き、仮に隠しカメラが設置されていたとしても映らないであろう角度で2回セックスをした。普段は3回するのだが、なんとなくこの日はこのホテルに漂う怪しい雰囲気に気圧されて「やることだけはサッサとやって、外に出よう」ということになった。

そして、我々は通常はホテルを出ると「じゃあねー」と別れるのだが、あのホテルの衝撃もあり「ちょっともう一杯飲んでいこう」となり、渋谷の居酒屋で再び飲み始めたのであった。皆さんもホテルの部屋番号の確認はキチンとしましょう。

Text/中川淳一郎