女陰に見える開谷
手細工の森の道すがら、開谷(へきたに。開は交合や女陰の隠語)を見渡すと、草がぼうぼうと生い茂り、谷と谷の間は青草の匂いが漂う。その谷は新開(あらばち。処女の股)よりはじまり様々な見た目の女陰に似ており、まるで赤貝のよう。自由仕躰国の金持ちは、湯治のためにここへ小座敷を建て、様々な女陰に似た谷の景色を楽しむというのだ。
お庄にとってこの開谷は退屈に感じたのだが、もう少し進むと、なんということか。一面に男根が生えた「茎(まら)の原」にたどり着いた。地面から生えるその男根のたくましさといったら、言葉にすることができない。
麩のように女陰の中で密着する麩まら、上反り雁高、根元の太いまら、先の太いまら、巨根に小まら……それぞれが朝日が昇るにしたがい茎盛んに生い茂り、これが茎の原の名物である。
お庄はその景色に我慢できなくなり、上反りのまらに近寄れば、あら不思議! その茎はむくむくむくとすぐにいきり立った。お庄は茎の上から茶臼(座位)の体勢で乗りかかり、金玉の元までイチモツを入れこみと、その味わいはまるで人間の男根そのもの! その気持ちの良さに不足はないが、抱きつくものがないため腰を伸ばしつつ挿入し、ふなふなとするその茎は、お庄がイク度に金玉が人間のようにぶるっと動く。そのまま二回イったお庄は着物から紙を取り出し股を拭き拭き。お庄が堪能した茎はすっかりと縮こまった。それでもこの茎の原が名残惜しいお庄だが、この原を跡にした。
やっとたどり着いた手細工の森
一里ほど歩くと、遂に手細工の森にたどり着いた。歩き疲れたお庄は森でしばらく休んでいると、そよそよと風が吹く。その風は、お庄の太ももを愛撫するように吹き、その気持ち良さったら我慢できない。そう、それが手細工の森の由来なのだ。この森に遊びに来た人々はセンズリをせずにはいられず、道中でセンズリをする人がいるのもこの森の名物なのだ。
お庄は手細工の森を見回すと「女人禁制」の立木があるのを見つけた。次はどんな国が待っているのかとお庄がワクワクしていると、相棒の鶴がやって来た。お庄は鶴の背中に乗り、次の国を目指すのであった……
というお話です!
次の国、“男だらけの男色の国”がどのように繁栄したかの話なのですが、残念ながら今回はこれでおしまい。
この春本は全四冊あり、今回紹介した話の内容はごく一部です。『異開奇莖/於荘玉開」にはこの他にも、スケベでおかしな国がたくさん登場します。
江戸期の本と聞けば、堅苦しいのではないかと感じていた方もいるかもしれませんが、先人たちは人々をあっと驚かせようと創作し、時を超えて私たちを笑わせにやってきます。
おみくじをしないとセックスできない国、地面にニョキニョキ生えた男根、シコシコとセンズリせずにはいられない森。江戸のスケベファンタジーを知るきっかけになれたら幸いです。
Text/春画―ル
待望の書籍が3/31に発売!
わたし、OL。推しは、絵師――美術蒐集はお金持ちだけの特権ではない。
美大に通っていたわけでも、古典や日本史が好きだったわけでもない「わたし」が身の丈に合った春画の愉しみ方をユーモアたっぷりに伝える。自分なりの視点で作品を愛で、調べ、作品を応用して遊びつくす知的冒険エッセイ。個人所蔵の珍しい春画も多数掲載。
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