一方、夫の言い分は…

しかし、そのあんばいを良しとしているのはわたしであって、家庭内には、もうひとり子の保護者がいる。夫です。夫はわたしに「女性だから」と女を押し付けることはない。にも関わらず、「男の子なんだから」と度々言いたがる。それはきっと、父親として息子に伝えたいメッセージもあるからだろうと思う。ただ、結果として、それが、わたしの方針とは相対してしまうのです。

夫婦の問題は話し合いで解決するのが良いとされています。でも、目の前の問題が、必ずしも話し合いで解決できるというわけでもない。そもそも、「話し合い」というものは、双方が歩み寄って、一致とまではいかずとも、納得できる点に落ち着くのが理想ですが、公平な第三者がいない状態ですると、どうしても弁が立つほうの道理が通りやすい。ゆえに自分の意を一方的に通せば、なんとなく後味悪く、かといって向こうの従う形になると、言いくるめられた気がして不満が残る。そんなわたしの性格上、我が家に関していうと、問題の性質によっては、あえて話し合わないという選択肢もありだと思うのです。

というわけで、いま現在、息子が何かで泣いたときに、「男の子だから泣くな」と叱咤する夫の横で、わたしは「男の子だって泣いていいんだよ~」と慰めるのが常なのですが、最近は夫が「ママは『男だって泣いていいんだよ』って言うかもしれないけれど、違うぞ。男はそんなことで泣くな」とややこしく激励するようになり、さらにそこにわたしが「パパは泣くなっていうけどねぇ、ママは悲しいときや寂しいときは、男の子でも女の子でも、大人でも子どもでも泣いてもいいって思ってるよ~」とマウントを返すというややこしいやりとりが行われることになるのですが、ママとパパは別々の人間。だから、それぞれ別々の考え方がある。そういう多様性を息子が理解してくれたらいいなと思っています。

Text/大泉りか