未来や人間の関係性は常に不確実

『希望の国のエクソダス』に、北海道に土地を購入し独自の経済圏を築いたポンちゃんたちを、語り手であるジャーナリストが娘を連れて訪ねる場面がある。以下は、その場面でのジャーナリストの独白だ。

絶対に崩壊しない制度はないとポンちゃんたちは示した。また、共同体のコミュニケーションの質が変化していくことも示した。つまり未来や人間の関係性は常に不確実だということだ。そういうことが判明したあとでは子どもは作らないという考え方もあるだろうし、それを否定するつもりはない。ただ、おれは、親子とか夫婦といった最小の共同体での個別のコミュニケーションが、その中で育っていく子どもにどういう風に刻まれていくのか自分で確かめてみたくなった。

『希望の国のエクソダス』 (p379-p380)

未来や人間の関係性は不確実で、コントロールなんかできるものではないし、こちらがしたことに対して、望むような結果を相手が返してくれるかどうかはわからない。次の世代の若者たちは、きっと私たちの常識や想像や価値観を、簡単に超えていく。

『キーチ!!』『キーチVS』や『希望の国のエクソダス』の主人公たちが示しているのはおそらくそんなことなんじゃないかと、子どもがいない身ながら私は思う。

陰惨な描写があったり経済の解説部分が難しかったりとどちらもけっこうハードな作品なので、いつものことながら万人におすすめというわけにはいかないんだけど――「次の世代」のことを考えたい人になら、子どもがいる・いないに関わらず面白いはずなので、いつか思い出したときに手にとってみてほしい。今すぐじゃなくても。

Text/チェコ好き(和田真里奈)

初の書籍化!

チェコ好き(和田 真里奈) さんの連載が書籍化されました!
『寂しくもないし、孤独でもないけれど、じゃあこの心のモヤモヤは何だと言うのか -女の人生をナナメ上から見つめるブックガイド-』は、書き下ろしも収録されて読み応えたっぷり。なんだかちょっともやっとする…そんなときのヒントがきっとあるはすです。