夫の様子が少しおかしかった時

少し前、夫の様子がおかしい時があった。休みの日に昼まで寝ているのである。

何もおかしくない、むしろ早起きのレベル、と思う人もいるかもしれないが、いつもの夫からすると驚天動地の事態なのだ。休みの日でも朝起きて、いきなり便所掃除を始めるというどうかしている人なのである。

そういう私も、23時に寝て9時前に起きると言う毎日10時間睡眠をした上で、昼寝もしたりするが「昼まで寝る」ということはあまりしない。

するとしたら「自分の連載が終わった」「赤の他人の作品がアニメ化した」など、仕事で不調があった時だ。起きていると将来不安や、赤の他人の死を願うだけになってしまうので、そういう時は寝るに限る。

よって夫も同じような症状だろうとすぐにわかった。相手が言わないことはわざわざ聞かない、でやってきた我々である。そっとしておくべきかと思った。しかし「昼すぎまで寝ている夫」というのは、あまりに解釈違い過ぎる。

よって、とても珍しく「オマエ ツカレテル シゴト ナニカアタ」と聞いた。平素言わないことを言うと、人は何故か片言になる。

すると、夕食時に夫は、最近の職場のことを「昔は忙しくても仕事にやりがいを感じていたが、最近は忙しいだけでそれすら感じられぬ」とツラツラ語り始めた。

私はそれを「仕事にやりがいとか感じてたのか、すげえけど、イカれてんな~」と思いながらも、聞いていた、それら全て「私にはどうにもできぬこと」である。

しかし、夫は「聞いてもらえてよかった」と言っていたし、一時期よりは元気になり、また休みの日に朝起きて、まず家中の換気をはじめる、どうかしている人に戻った。

このように「言う」「聞く」というのは非常に重要なことなのだ。「言っても仕方ない」などということはなく、言った時点、聞いてもらった時点で効果はあるのである。

よって聞く方も「そんなこと言われても困る」と思わず「聞くことに意味がある」と思って、とりあえず赤べこになったと思って聞くべきなのだ。

「言う」の効果を目の当たりにしたので、私も愚痴でも何でもとりあえず夫に言ってみようかと思ったのだが、私の愚痴は「赤の他人死なないだろうか」という話なので、まだ言えていない。

そういうことはツイッターにでも書こう。

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