落ち着け、これは罠だ「もし問題のない年収5000万の人に求婚されたら?」

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今回のテーマは「もし特に問題のない年収5000万の人から求婚されたらどうしますか?」だ。

落ち着け、これは罠だ。
今、読者の多くが「自分だったらどうするか」を考えてしまっていると思う。
考えるのは良い、だが答えは言うな。

独身で恋人もいない人間なら何も考えずに「僕たち結婚しまーす!」とダブルピースで答えていいかもしれないが、既婚者やパートナーがいる人間は特に注意が必要だ。

本当に求婚されたならいざ知らず、妄想に対し「今の相手は捨てて5000万と結婚します!」と言って嫌なヤツと思われるのはバカらしい。
そう判断して「5000万より今の相手と築いた『絆』の方に価値がある」などと、パリピみたいなことを言う人の方が多数派なのではないだろうか。

答えとしては模範解答だ。
しかしそれすらも「良い子ぶっている」「そういう奴ほど実際5000万に求婚されたら熱く手の平を返す」と悪く言おうと思えばいくらでも言える。
何より本当に5000万に求婚された時、この時の自分の発言が足を引っ張ることになりかねない。

このような質問は答える側に大きなリスクがある。イメージダウンさせようと思えばいくらで出来るからだ。

例えば「貧乏のイケメン、金持ちのブサイク、つきあうならどっち」という質問は、どっちを選んでも「金や顔で男を判断するクソ女」ということに出来るし「選べない」と答えても「え?その顔で選べると思ったんですか?」と言うことが出来る。

また、おっさんにティーンのアイドルの写真を見せ「この中でつきあうなら誰?」と聞いて、誰か選べば「娘ほどの未成年を性的対象として見ているキモいおっさん」にすることが可能なのだ。
毅然と「この年頃の子を選ぶなんてできない」と言うべきなのかもしれないが「選べ」と言われたら、人間何となく選んでしまうものなのだ、つまり「罠」に等しい。

このように「人に恋愛対象やパートナーとして人を選ばせる質問」というのは、答える側をいとも容易く「身の程知らずのブス」や「ロリコンおじさん」にすることが出来るのだ。

答えた方に罪はない、何故なら「聞かれたから」だ。

日本人は真面目なのか「質問を質問で返すな!」とブチ切れる吉良吉影のイメージが強すぎるのか「赤の他人が起こした不倫騒動についてどう思うか?」などという「関係ない」としか言いようがない質問にも律儀に答えてしまう。

その結果「大物芸能人○○、女優××の不倫報道を猛烈批判!」などというネットニュースにされて「ご意見番気取りかよ」と叩かれるという、完全なもらい事故をしているケースがよく見られる。

「聞かれたことには答えるのが礼儀」かもしれないが、質問自体が無礼だったり自分が不利を被るものだったら答える必要はないのだ。

確かに相手がキラークイーンを持っていたら素直に答えた方が良いとは思うが、相手がスタンド使いでなければ「何を言わせたくて、そのような質問を?」と、質問を質問で返したり黙秘しても良いのだ。

犯罪を犯しても黙秘は認められるのである、それがシャバの人間には認められない、などということはないはずだ、

答えないと「つまらない奴」と文句を言われるかもしれないが、もうそういう奴は何を言っても文句を言う。