町内会の仕事で社会と関わることに
話は変わるが、今年、町内会の班長になってしまった。 せっかく、会社を辞め無職となり、社会から落ちのびて来たというのに、その翌年にまた社会と関わらなければいけないというのは「運命とは残酷なものである」とナレーションをつけざるをえない。
町内会の仕事は女がやるもの、などとは微塵も思っていないが、夫は週5どころか週8ぐらい会社に行っている、片や私は週20で家にいる、つまり町内に存在しているのだ。 公平に見れば見るほど私がやるべき、としか言いようがない。
よって私は、一件一件班員宅を訪問し、町内会費を集めた。 これは、私の人生史上最大の「偉業」と思っているのだが、夫は全然褒めてくれなかったので、インターネットに「すごいことをしたぞ」と書いたら、褒めてもらえた。 こういうところはインターネット最高である。
このように、社会行動が死ぬほどストレスな私だが、先日さらに「町内清掃」があった。
事前に出欠を回覧板で確認し、当日、掃除道具の手配と出欠確認、後日不参加者から不参加金をもらう、というのが班長の仕事である。
これのどこが難しいんだ、と思われるかもしれないが、コミュ症にとっては10か所ぐらい命を落とすところがある。難易度的には魔界村と同じだ。
町内清掃は日曜日なのだが、夫は日曜も普通に出社していることが多いため、当然当日も私が行くことになると思っていた。
しかし夫は前日こういった。 「俺が行こう」
これは刃牙でいう所の、夜叉猿に挑もうとする加藤に対しバキが「アンタじゃムリだオレがかわる」と言うシーンである。 加藤はそれに対し激高したが、私は心から「ありがてえ」と思った。
しかし、さすがに申し訳ないし、次回は私1人かもしれないので「私も同行しよう」と花京院のポーズをとったのだが、実際は「あ、あっしも行くでヤンス!」という感じだったと思う。
そして当日、あいさつと班員の点呼を取り、掃除の説明をする夫の隣で、顔中の穴を全開にしながら「オレにはムリだ」と思った。
そして同時に思った「カ…カッコいい…」と。
私にとって社会性のある夫の姿は、アメリカ家庭における「BBQが上手い父親」と同じ「COOL…」なのである。
このように「社会行動は夫とすると楽しい」というか「夫とするに限る」。
こうすることにより、私の社会性のなさで周囲にかける迷惑が減り、私は社会性のある夫に惚れ直すことができる、まさに一石二鳥と言えよう。
Text/カレー沢薫
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