飽きることなく続けられる「夫婦だけの遊び・ギャグ」/カレー沢薫

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みんな回しているか。経済(ガチャ)を。

正月と言えば、どのソシャゲも「福袋」という名の「3000円払えばタダでレアカードがもらえる」系キャンペーンをやるため、我々、課金兵はもちろんのこと、無課金者ですらついつい課金してしまうという、顧客感謝でもなんでもないことをこぞってやっている。もちろん、3000円払うだけでレアがタダでもらえると聞いては、回さないわけにはいかないのだ。

ちなみに福袋の結果は皆さんには悪いが上々だった。しかし問題はその後である。

私は去年夏ごろから『 Fate/Grand Order 』(以下FGO)というソシャゲをやっている。年末にアニメが放送されたからか、最近またユーザーを増やしている人気ゲームだ。

まず私が新しいゲームを始めるときは先に、キャラをチェックする。「お前にキめた」という推しキャラを選定するためだ。プレイしているうちに好きになることもあるが(例えば刀剣乱舞に出てくるへし切長谷部というキャラクター)、私は大体この一目ぼれ方式が多い。

そこで私が「お前や…」と思ったキャラは「坂田金時」というキャラである。

しかしこの金時、FGOのガチャでは一番出づらい「☆5」のキャラだったのだ。

この「見初めた相手のレア度が高い」というのは「愛した相手が女子小学生だった」ぐらいの悲劇なのだ。諦めないと社会的に死ぬ。

しかもこの金時、☆5の上に、限定キャラで限られた期間しかガチャに出現しないのだ。

どうやら私が愛した男は男子幼稚園児だったようだ。あいさつしただけで「事案」と言われてしまう逸材であり「追いかけてはならない」存在だ。

しかし逆に言えば、いくら回しても出ないとわかっているなら、回さなくて済むのだ。よって、FGOに課金はしていたが、どうしても欲しい金時がいないため、そこまでつぎ込んではいなかった。

しかし忘れもしない1月11日。ついに、坂田金時がその一日だけガチャに出現したのだ。

追ってはならない、しかし私は「出る」と聞いた瞬間、特攻服にバットを携え、単車にまたがり「待ってたぜ、この時をよォォォォ!」と彼のいる幼稚園に出発(デッパツ)していたのだった。

福袋で大勝利を収めたこの私である。意外と金時も一発で出てしまうのではという慢心があった。課金したとしても1万ぐらいならタダで出た範囲だ。

だが、出なかった。回せど回せど出なかった。3万ほど課金したとこで私の脳裏に「撤退」という文字が浮かんだ。

だが、物事というのは始めるのは容易く続けるのは難しい。そして、それよりさらに難しいのが「志半ばで諦める」ことだ。ソシャゲというのは特に「諦める」のが難しい。推しが出るまでやらないと、今までの課金が全て無駄になるからだ。皆さんも人を一発でも殴ってしまったら死ぬまで殴らないといけないと思うだろう。それと同じだ。

次は出るかもしれない。そう信じ私は回した。

そして私は課金額が5万を越えたところでスマホを置いたのである。

大敗北だ。しかし私を打ちのめしたのは「1日で5万失い推しも出なかった」という事実ではない。ツイッターで、同じFGOのガチャで「60万で推しを出すことができた」という人を見たからだ。

ソシャゲのガチャには「描いたら出る教」「おしっこ我慢教」など様々な願掛けの宗派がある。どれもオカルトにしか過ぎないが、一つだけ確実な宗派がある。

「出るまで回す教」だ。

出るまで回せば確実に出る、つまり勝率100%だ。

どうしても欲しければ、出るまで回せばいいのだ。しかし私にはそれが出来なかった。つまり、全ては私のオタクとしての未熟さ、徳の低さが招いたことである。金の有無の問題ではない。

田岡茂一級に「敗因はこの私」なのだ。金時、60万出せない俺を許して欲しい。

このように2017年は波乱の幕開け(財布の中身的に)となったのだが、全くそれとは関係ない今回のテーマは「夫婦だけの遊び(またはギャグ)」だ。