「で、あなたはこれから何になるつもりなの?」
無職を前にした私に発せられた質問である。
平素なら当然「オウフwwwいわゆるストレートな質問キタコレですねwww」となるわけだが、質問者が生計を一にする配偶者だった場合、話は別である。
よって私はこのように、真摯に答えた。
勝手に会社を辞めることにした私に対し、夫は特に異を唱えず「それが良いのではないか」という反応であったが、おそらく多分、夫的には私に外で働いて欲しいのだと思う。
外で働くと言ってもゴミ捨て場の電化製品の金属を抜いて売る等のフリーランスではなく「企業に属して安定した収入を得るべきでは」と考えているのだ。
確かに、彼は学校を卒業してから20年近く、転職すら1度もせず同一企業にいるという最近珍しいぐらいのゴリゴリのサラリーマンである。
そんな夫から見たら私のような、よくわからんことをして、よくわからんことをした分だけ金をもらい、よくわからんことがない時は収入がない、という、よくわからん仕事は不安が過ぎるだろう。
つまり夫は私の退職、作家一本でやっていくことによって、自分たちの生活が心配なのだ。
自分も心配なんだから、そこは嘘でも「大丈夫。俺がなんとかする」みたいに言ってくれんもんかな、と一瞬思ったが、私はすぐにハッとし、己の額を鉄板に押し付けた。
「焼き土下座ライト版」である。
申し遅れたが、この話はお好み焼き屋でしていたのだ。
夫は「共働きとはいえ、家事は女が中心にやるべき」という考えをもたない人である。
ゴールデンウイークも初日、起きて一番にやりだしたことが家の大掃除という変態だ。
そして、全く同じように「共働きとは言え、男が大黒柱になるべき」とは考えてないだけなのである。
一日68時間ツイッターをしていると(無職になったら148時間に増やす予定)と「共働きなのに旦那が全く家事をしない」「ゴミ捨てでドヤ顔」「ウンコも片さずイクメンとな?!」という、夫婦間不公平激おこツイートをよく見かける。
私はこの「怒られる側」なので、安易に「わかり哲也」などと言うと、旦那より先にデスノートに名前を書かれてしまうため言えないのだが、「同じ立場だったらそりゃ怒る」と思っていた。
しかし、夫に対し「男なんだから生活は俺が何とかすると言え」と思うのは「女だから共働きでも家事を多くやれ」と求めるのと全く違わないのである。
人間は自分の不遇を嘆くつもりで、権利ばかり主張してしまうときがある。
もちろん人には、不調のときもある。どちらかが多く荷物を背負わねばならない場合もあるだろう。むしろそうやって荷物を持ちあう関係こそが家族なのかもしれない。
だが、お互い五体満足な場合、深淵を覗くとき律儀に覗き返してくる深淵の如く、相手に荷物を持たせるときは自分も同じ重さの荷物を持つ気持ちがなければ、とても家族として上手くいくわけがない。
深淵パイセン マジリスペクト
以上が私の脳内で出た結論である。
夫は、そのようなことは一言も言わず、目の前でビールを飲んでお好み焼き食っているだけなので、そんな小難しいことはビタイチ考えていないかもしれない。
しかしオタクというのは「あのキャラとあのキャラは絶対つきあっている」等、脳内で結論を出しがちな生き物だし、それはいつでも正しいのだ。もちろん私の脳内だけでは。
とにかく、これからも夫が外で働いているぐらいは、私もよくわからん仕事を頑張る他ないし、それがダメになったら、死ぬほど嫌だが、また外で働くことを検討せねばならない、と思った次第である。
最後になるが今回のテーマは「最近、夫としたこと」だ。
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