特に役に立たない能力

そして現在、私は42歳のJJ(熟女)になり、元気いっぱいに生きている。
そんなある日の正午前、スマホに知らない番号から電話がかかってきた。

電話の主のKさん(40代男性)は、父の昔の部下だった。後から聞いた話によると、父は小さなアパートで1人暮らししていて、入居の際にKさんが保証人(緊急連絡先)になっていたらしい。

Kさんから「お伝えしづらいんですが…」と聞いた瞬間、私は「父が自殺したかな」とピンときた。

中二病っぽいのであまり人に話さないようにしているが、私はたまに勘が冴えるのだ。
黒猫を拾う夢を見た後に黒猫を拾ったりとか、それ系の正夢を見ることがたまにあったが、スピリチュアルに興味がないので「そういうこともあるわいな」ぐらいに思っていた。

一週間ほど前から、私は同じ記憶が何度も浮かんでいた。
それは高校時代、アル中の母のリストカットやオーバードーズに耐えかねて、父に電話して「もう死にたい」と訴えたら「勝手に死ね!自殺しろ!」と怒鳴られたという、最悪の記憶だった。

ずっと思い出してなかったのに、なんで今頃フラッシュバックするんだろう?と謎だったが、それは虫の知らせだったのだろう。でもそんな知らせ方だと「父に連絡しよかいな」みたいな気にはならない。
それに予想しようとしてできるわけじゃないし、特に役に立たない能力である。それよりウンコを爆弾に変えたり、股間から空気弾を発射するスタンド能力がほしかった。

…みたいなことを考えながら、私はKさんの話を聞いていた。

Kさんいわく、警察から電話があって「父が家の近くの団地の中庭で倒れているのを発見された。その後、病院に搬送されて死亡が確認されたが、詳しい死因はまだわからない。親族と連絡をとりたいので、この番号にかけてほしい」と言われたそうだ。

電話口のKさんは涙声だったので、「それ飛び降り自殺だと思う!」とか言えないし、私は神妙にしなければと思っていた。
そしてKさんにお礼を言って電話を切った後、自分の心を見つめると「やっぱり私、ホッとしてるわ」と気づいた。

父は69歳だった。このまま年をとって病気・介護・認知症…とかなったら面倒くせえな。無視したいけど、私の性格的に完無視はできなくて、お金を出したりするんだろうな。また父のためにお金を出すのか、私が必死に稼いだお金を。

そんな思いが、いつも心のどこかにあった。親が生きている限り、いつも時限爆弾を抱えている気分でいるのが毒親育ちあるあるだ。

などと考察している場合じゃない。これからやらなきゃいけないことが山ほどある。
私はハア~~~ッと深いため息をついた後に、「よっこいしょういち」とJJらしく立ち上がって、教えられた刑事さんの携帯に電話をかけた。