ADHDの宝

私は、武蔵小杉駅でいつもゴリラに感謝することがある。

どんな駅かご存知ない方のために説明しよう。
武蔵小杉駅は、50メートル先の改札から出るために、絶対に割り込みなんかしない品行方正な人達の列が毎朝できる駅である。

私はそこに並ぶ度、走って先頭に割り込んで改札をピッとしたい衝動を我慢することが辛くて叫びそうになっている。

その度に、どう考えても今後普通にはなれないと実感するのだ。

だが、「普通は武蔵小杉駅で並べるんだから我慢しろ」と言わずに、新丸子から歩くことを責めないパートナーを見つけられたことは、私の人生にとって大きかったと思う。

社会に溶け込もうと必死で努力しているADHDの方は沢山いる。

もちろん努力する人は素敵だが、24時間自分が周囲に合わせるばかりでは疲れてしまうと思う。

しかし、仕事やご近所付き合いと違って、結婚は2人が納得していれば周囲に合わせる必要がない。

私は自分に合わせた環境をつくってくれるパートナーと一緒になって、自由に近づけたと感じたのだ。

ADHDの兄弟姉妹達へ

私は今まで、ADHDが周りに合わせる方法についてばかり目にしてきた。

どうしたら長く席に座っていられるか、どうしたら集団に溶け込めるか、
そんな風に、『世間』に寄せていくため大変な努力した人の体験を目にする度に、胸がぎゅっとなった。

「やっぱり私は頑張ってないから、辛いのは仕方ないのかな」
と悲しくなることもあった。

一方で、周りがADHDなことを認めて合わせてもらえる人間関係作りをしているという話は、ほとんど目にしたことがなかった。

けれど、自分が結果的にそうなってみて、夫婦関係に限らず、関わる人も自分もそれで楽しいと思えるのなら、案外悪くないと思ったのだ。

なので、もし皆さんが頑張りすぎて辛いときは、私のような例もあることを知って頂きたいと思う。

全国の、自分と戦うADHDである兄弟姉妹の幸せを、心から願っている。

Text/元鈴木さん

※2017年6月9日に「TOFUFU」で掲載しました

次回は <10年前のイケオジな元カレと会ってきたエモい話>です。
元鈴木さんが、10年前に付き合っていたイケてるオジさんと再会することに。「あのとき4股してたんだよね!」といった昔話もそこそこに、「相変わらず若い子と付き合ってんの?」と聞いてみると、衝撃の答えが!