印象的だった不倫会見

 そもそも、この「鬼嫁」というイメージがどこから派生したものかというと、1993年の川崎麻世の不倫記者会見が発端なのである。

 25年も前の話なのだけど、あのインパクトはリアタイで見た者の心にはクッキリと刻まれていると思う。いや少なくとも当時ローティーンだった私の心を鷲掴みにした。なんと言っても情報量の多さよ。元ジャニーズアイドル。奥様は外国人モデル。不倫相手はあの斉藤由貴。
斉藤由貴といえば、その前年に同じく不倫相手だった尾崎豊が謎の死を遂げていて、なんとなくアンタッチャブルな雰囲気があった時期だけど、「え、、、尾崎の次、川崎麻世いったってこと、、、?」と、斉藤由貴のファムファタールぶりというか見境のなさに背筋が凍った。

 そして、当の川崎麻世を私たち視聴者は久々にTVで見ることになるのだが、不倫騒動の謝罪記者会見の場にブライアン・アダムスみたいなGジャン&Gパンスタイルで現れ、相変わらず顔は笑うぐらいイケメンで、側にはいつの間にか結婚していた外国人モデルが同じくGパンで仁王立ち。なにこれ面白い。
妻の目の前なのに「彼女(斉藤由貴)にキスしたいと思った、素敵だと思った」などキラーワードがバンバン飛び出し、週に6回も密会していたという。色々すごいぞ。正直に(?)ベラベラ喋る麻世と、終始それを無言で見つめるカイヤ。画が面白すぎる。

 とにかくあの記者会見のインパクトがすごすぎて、私の脳内では「この夫婦、普通じゃない」と刷り込まれてしまった。

 その後、別居しても「恐妻家と鬼嫁」として家族で旅番組に出演したり、お互い恋人らしき存在がいてもバラエティ番組で並んでトークしたり、なにをやってもとくに違和感や反感を感じることはなく、「だって、麻世とカイヤだから」と安心して見ていた。

 しかし、そんな二人の夫婦関係もついに終わりのときを迎えるっぽくて。いや、もしかしたらとっくに「終わってる」夫婦関係だったのかもしれないけど、形式としてキチンと「終わる」ことを、どうやら麻世の方が一方的に選んだっぽくて。私は一抹の寂しさを感じた。あー、やっぱそうなるか。わかる、しんどいよね、って。

 そしてメディアは連日、この二人が長年やってきた夫婦の形を、いかに「おかしな」ことだったかを報じてる。ときにはバカにしたような、批判するような論調で。
え、でも、それって、私たちが望んできたことだよね? あの二人が本当はどんな夫婦かなんてどうでもよくて、もっと「面白い」、もっと「変な」夫婦の形を見せてよ、って、そうねだってきたのは私たちじゃない。