面白くなくとも気持ちのいい会話を

ただ、話をすごく面白くすることはなくとも、会話をしていて嫌悪感を覚えるとか、この人に話しても無意味と感じてしまうようでは辛いですよね。配偶者との会話が面白くある必要はないと書きましたが、配偶者との会話は落ち着ける、安心できるものであったほうがいい。

家族は社会の最小構成単位で、何かあったときの最後の防波堤です。大体の人は、病めるときも、悲しいときも、貧しいときも、愛し、敬い、慰め、助けあうものとして夫婦になっているわけで、それこそが夫婦となる大きな理由の一つです。

そういう意味では、冒頭で紹介した、

・一方的に話を聞かされるばかりで自分に話を振ってこない
・聞かされる話も、付き合う前、結婚前より手を抜いているのがミエミエ
・その上、こちらの話には雑な相槌しかしなくてムカムカ

こういったモヤモヤは、相手の話がつまらないというより、相手が自分とのコミュニケーションで敬意を示していない、例の親しき仲に礼儀なしをやらかしているケースに見えます。

“一番近くにいる他人だからこそ、友達や会社の同僚以上に、意見が違った時に『親しき仲にも礼儀あり』であってしかるべしなんですけどね。これがなかなか意識していないと、できない。”

参考|「離婚の理由殿堂入り!「性格の不一致」にはホワイトボードで挑め」より

自分ばかり話をしている、しかもその話は丁寧ではない、話を振ってもまともに相手しない……これらを友達や取引先に対してやっていたら、すぐに離れていくはず。でも、家族という関係性では、油断して、甘えて、やってしまう人がいる。

『親しき仲に礼儀なし』を終わらせるには

会話における『親しき仲に礼儀なし』状態を終わらせるのはすごく難しいですけれど、できないことはありません。

まずは、「あなたが好きだから、もっとあなたと楽しく話をしたい!」と伝えること。決して相手を非難するのではなく、しかも目的はもっと楽しくするためであることを訴えます。

「始終顔を合わせる夫婦なのに、お互いが相手の話を聞いていて嫌な気持ちになるなんて、私は嫌だ!」と自分を主語にして、自分の気持ちを伝えるのもいいですね。

家族なのだから言われなくても分かって欲しいと思いたいところですが、この相手に「察っして」を求めることも『親しき仲に礼儀なし』と同じだと考えましょう。

セックスレスの解消法にも繋がりますが、「相手が自分のことを分かっていて当然」と思っていると、過剰な期待と現実のギャップに苦しむことになります。これはまた別の機会に紹介します。

次に、お互いの会話の仕方にちょっと手を加えます。話をする方は、今からする話が雑談なのか、共感が欲しい愚痴なのか、解決策を求めるものなのかを最初に触れます。

男女の会話のすれ違いでよく言われるのは(実は男女に限らないんですけど)、女性が愚痴を言い共感を求め、男性が解決策を提示するというものです。これは、お互いの会話の目的が共有されていないことから起きる現象です。

枕詞として「これは雑談なんだけど」「すっごく嫌なことがあったから『うん、うん』ってうなづきながら聞いてくれる?」という風に、相手に自分がしてほしい聞き方を最初にお願いしちゃうわけです。

後はそうですね、こういったことを相手に求めるだけではなく、自分もやろうとする姿勢を見せること。ほら、夫婦って、自分が努力しているのに、相手がやってないとイライラしたり、やっていない方に引っ張られたりするじゃないですか。

我が家の場合は、夫婦のどちらかがダイエットをし始めると、特に体重・体脂肪を気にしていない方もダイエットを意識するようにしています。例えば、相手がいる前では間食しないようにしたり、食べたお菓子のゴミは相手に見えないように処分したり(笑)。

『相手の話がつまらない問題』も、結局、夫婦二人の問題ととらえて一緒に解決しようと思えるかどうかなんですよね。一人ではできないことを実現するために、二人の方が快適だから夫婦になったということを、お互い意識するのがスタートラインです。

次回は【大好きなお義母さんと一緒にいたい!わけないので義実家とうまくやるには】です。お楽しみに。

Text/斗比主閲子
※2016年9月2日に「TOFUFU」で掲載しました。