会社の先輩女性からの一言
こうして彼女との楽しい一夜は終わったのだが、この後マミさんからは頻繁に連絡が来るようになる。僕自身のことをいえば、大手総合商社の社員のため、かなり年収は高い。マミさんからの頻繁な誘いは、この立場の妻になることを狙っているのでは? と思ってしまったのだ。
いや、こんな発言、今の時代、炎上するのは間違いないのだが、初対面の日に僕の家に来てセックスをし、その後の付き合いを求める感覚、自分としては理解できなかった。
そこから2週間後、僕は会社の先輩女性と週末に飲むことになっていた。マミさんは「私も行く~!」と言い、連れて行った。そして彼女が房総半島に住んでいることから早く帰ったのだが会社の先輩女性はこう言った。
「ニノミヤ君、彼女、あなたのことを吸い尽くす気よ。私は一切彼女のことを好きになれなかったし、あなたがこれから彼女と幸せになれる未来が来るかは分からない。あなたが彼女を好きならばいいけど、私は彼女と好き同士になれない。ここは理解してね。多分、あなた、あの人とセックスしたんでしょ? そしてそれは良かったんでしょ? だからといって全面的に信用するのはどうかと思うよ」
僕にとってはこの発言の方が信用できる。結局マミさんとは「縁を切る」選択をし、一切の連絡を絶つことにした。もしもあのとき彼女と付き合っていたらどうなっていたのか――。
多分何もいいことはなかったと思う。どうでもいい人間関係が増えただけで、僕が当時持っていた大事な人間関係を失ったのでは、と思う。そこから「一時期の性欲におぼれるな……」と理解したのだ。
Text/中川淳一郎
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