新しい選択肢を用意すると、ぐっと気が楽になる

個人的なお話しをしてたいへん恐縮ですが、わたしも少し前まではあなたと同じような状況でした。
わたしは北海道出身で、夫は沖縄県出身。
わたしたちが出会った頃、夫は関西を拠点に仕事をしていたため、わたしが就職のタイミングで夫のもとへ行き、そのまま結婚して数年は京都で暮らしていました。
もともと、わたしは「いつか北海道に帰りたい」という思いがあり、2人で話し合った結果、現在は引っ越して北海道で暮らしています。
あなたの彼と同じように、夫も全く縁もゆかりもない土地に移住し、それに伴って転職もしました。
わたしは地元ですから、親も友達もいますし、気候や文化だってもちろん馴染みがありますが、夫はそうじゃない。
もちろん、夫はあらかじめそれらを全て想像し、納得したうえでの移住でしたが、きっと体力的にも精神的にも、かなりの負担になったことでしょう。

北海道への移住の話が本格化してから、わたしがひとつだけ決めていたことがあります。
それは、夫が北海道での暮らしに馴染めなかったら、いつだってまた関西に戻ったり、夫の出身地である沖縄に行こうということ。
そうなると、当然お金はかかりますし、仕事だってまた変えなくてはいけなくなります。
年齢的にも、北海道へ移住したときよりずっとたいへんだとは思います。
でも、決して不可能なことではないですよね。
たとえお金や労力がかかったとしても、つらい環境で苦しみながら生活し続けるよりも断然いいですし、夫と楽しく暮らすためにそれが必須だと思えば決して無駄ではありません。
「嫌だったら辞めよう」「つらかったら環境を変えよう」と新しい選択肢を用意しておくことは、とても気が楽になります。
一度決めたことは何があっても最後までやり抜かなくてはいけない、なんてことはないですからね。

北海道に移住して1年以上経ちましたが、現時点ではこの決断をしてよかったと心から思っています。
最初こそ知り合いがひとりもおらず、環境や文化の違いに小さな戸惑いはあったようですが、運よく気候が体に合っていたのか体の弱い夫が体調を崩すことはほとんどなくなりましたし、今はもう新しい友達ができたり、いろんなお店を開拓してとても楽しんでいます。

彼だって、あなたの地元に引っ越してすぐはあなたしか知り合いがいないとは思いますが、働き始めたら知り合いができ、気の合う友達だって増えていくはずです。
自然と、あなたの地元のよさを取り入れ、自分なりに楽しいコミュニティを広げていくのではないでしょうか。
もちろん、最初こそは彼が慣れない土地に気を張り過ぎていないか気遣ったり、友達や自分の親との仲を取り持とうとしたり、あなたが気に掛ける必要はあるとは思います。
でも、ある程度その暮らしに慣れたら、あなたがそこまで背負う必要はありません。
当たり前ですが、恋人や夫婦といえど彼には彼の人生がありますから、あなたが彼に対して「自分がなんとかしてあげなくちゃ」と責任を感じて過剰なまでに気を遣いすぎるのは、失礼にもなり得ます。
彼が「つらい」「しんどい」と声をあげたときに手を差し伸べるのと、あなたが常に先回りしてなんでもしてあげるのとでは、同じように寄り添っているつもりでも、全然違いますからね。
自分の人生を自分で決められる時点で、立派な大人なのです。
心配症のあなたが「もし自分が先に死んでしまったら……」という不安も、気持ちがわからないわけではないですが、そんな考え得る全ての可能性のなにもかもを想像していたところで、現時点でどうすることもできないのです。
もし、あなたの不安が現実になったとしても、彼が新しい土地でつくりあげた環境で過ごすのかもしれませんが、別にそこに永住しなくちゃいけないという決まりはないんですよ。