第17回:『最高の離婚』は現代のトレンディドラマである(後編)
『最高の離婚』は『東京ラブストーリー』の現代版!?
『最高の離婚』は、テレビドラマにとって冬の時代と言われる昨今、久々に世間で話題になったと実感できるドラマでした(前編はこちら→第16回:『最高の離婚』がたどり着いた“恋愛ドラマ”の境地とは?)。
平均視聴率こそ11.8%(関東地区・ビデオリサーチ社調べ)と可もなく不可もないものでしたが、放送中はTwitterに感想があふれ、NAVERでも盛んに劇中の名言がまとめられるなど、明らかにほかのドラマとは違う“ホットエントリ感”があったと思います。
その人気を支えていた要因は、男女の相互理解という題材の身近さ、出演者の魅力もさることながら、脚本自体のおもしろさが大きく関わっていたのではないでしょうか。
このドラマは、意外な事件が起きるわけでもなく、奇抜なストーリー展開があるわけでもない、言ってしまえば「男女が痴話げんかを繰り返している」だけの話です。
しかし、ツッコミやズレが生み出す軽妙なやりとり、たとえ話を多用するしゃれた言い回し、登場人物のキャラや背景を想像させる具体的なエピソードなど、会話劇そのものの豊かさで視聴者をグイグイと惹きこんでいきました。
また、2013年の“いま”を象徴するような時事ネタや流行、固有名詞がふんだんに盛り込まれていたのも本作の特徴です。
Facebook、LINE、スカイツリー、『レ・ミゼラブル』、ファンキーモンキーベイビーズ、でんぱ組.inc、そして震災……。
こうした具体的なワードは、ドラマの登場人物たちが、私たちと同じ時代を背負った“いまを生きる”人間なのだというリアリティと説得力を与えてくれました。
男女の色恋を、事件中心ではなく会話中心に、時代や流行を織り交ぜて描く。
これって実は、80年代末~90年代初頭に大流行した「トレンディドラマ」にそっくりではないでしょうか?
というのも、本作は脚本家の坂元裕二氏によるオリジナルストーリー。何を隠そう、あの『東京ラブストーリー』を書いた人なのです(参考→第4回:『東京ラブストーリー』~恋もドラマも魔法が使えた時代~)。
私が思うに『最高の離婚』は、『東京ラブストーリー』の明らかな現代版。
“トレンディドラマを現代に復権させるのは可能か?”という、坂元氏の大いなる挑戦だったと思うのです。