第12回:『モテキ』に学ぶ脳内完結男子の攻略法!?

めんどくさいサブカル男子の自己完結ドラマ?

By koadmunkee By koadmunkee

 みんな、どう? 最近、モテ期きてる?

 こんにちは、モテ期は3歳のときにもう済ませた福田です。
今週も往年の恋愛ドラマをあえて見直し、勝手に深読みしていきましょう。

 今回のテーマは、森山未來が筋金入りの草食系ヘタレ男子を演じ、2011年には映画化もされ大ヒットした『モテキ』(2010年放送、テレビ東京)です。

 マンガ好きの間では早くから話題となっていた原作や、興行収入22億円を突破した映画版に比べると、深夜に放送されていたドラマ版はややマニアックなサブカル層向けの作品…といったイメージがあるかもしれません。
しかし、自意識をこじらせた文科系男子の自己完結型の恋愛思考パターンが、もっとも典型的かつコミカルに表現されていたのがこのドラマ版でした。

 30歳を目前に控え、ほとんど恋愛経験のないセカンド童貞(しかもなりゆきで喪失して以来ご無沙汰)の藤本幸世(森山未來)は、ある日突然、知り合いの女の子から連絡が相次ぎ“モテ期”に突入。
ところが、これまでモテたことのない幸世は、「俺のこと好きなの…?」と思っても、自分に自信がないため、慎重になりすぎてチャンスをものにできません。
それどころか、「どうせ俺なんか…」と卑屈になるあまり、“心のシャッター”を下ろして自己完結。かえって女の子を遠ざけたり、傷付けたりしてしまいます。

 このドラマを見た女性は、きっと「この男、めんどくせー!」とあきれ果てるのではないでしょうか。
でも、ここに「恋愛ドラマ」の現在形が描かれているような気がするのです。

あなたも“居心地のいい地獄”にハマッている!?

 幸世は、30歳になっても定職に就かず、派遣社員をしている自分を「永遠にループするモラトリアムスパイラル」(第10話)と評しますが、これは恋愛に対しても同じ。
「俺のこと好きなの…?」という期待と、「どうせ俺なんか…」という自虐の間を無限ループし、負のスパイラルに陥ってしまいます。

 彼は、本当の意味で相手の女性と“対話”できていません。対話の相手はいつだって自分自身。だから、自分で勝手に盛り上がって、自分で勝手に自滅して、そして最後は自分の好きなサブカルチャーの世界に逃げ込んでしまうのです。

「あー、こうやって好きなマンガ読んでるときが、いちばんラクだわ。居心地のいい地獄だ」(第4話)

 死ぬほど情けないセリフですが、これって誰もが少しは思い当たることではないでしょうか。
恋愛なんて、しんどくてめんどくさいことをして人と関わるよりも、“居心地のいい地獄”で自己完結していたほうがラクで楽しい。
幸世の例は極端すぎますが、ドラマに登場する3人のヒロインもまた、どこか幸世と似たところがあります。

 幸世とは派遣社員の同僚だった土井亜紀(野波麻帆)は、女の見栄とプライドから、「幸世のほうから自分を好きになって告白させる」というストーリーしか許すことができません。

 カメラマンアシスタントの中柴いつか(満島ひかり)は、男性モテを意識した「女の子らしいふるまい」をする自分が想像できず、自分と似たようなタイプの幸世との友情関係を疑似恋愛と混同させることで、自分の中の“女”と折り合いをつけようとしています。

 そして、幸世の永遠の理想の女性=“ラスボス”として描かれる小宮山夏樹(松本莉緒)もまた、自分でも思ってもみない道に進む人生が好きなのだと言い、恋愛や結婚という形で異性と関係を切り結ぶことができない女性です。

 彼女たちもまた、自分で作り上げた“居心地のいい地獄”というルールに縛られているのです。