「なんだ、私って魅力あるんだ」と思える

1977年発売の『若きドジたち』の中に「ヨーコとジロー」というシリーズがあります。ジローはヨーコにホレていて、いいところを見せようと、カントの『純粋理性批判』を持ってきます。しかし、中に何が書いているのかを問われると答えられず、ヨーコに取られたら中身は『SEX図解』という本だったことが明らかになる。男の見栄っ張りさとスケベさがよく表れています。

ジローはとにかくヨーコとエロがしたくてたまらないのですが、あるとき、意を決してこう言います。「ネェお願い ぼくどうしてもヨーコちゃんとキスしたいの ウェーン ドウジデモギズじだいの! ウェーン」と切り出す。ヨーコが「そいじゃカルークならいいわ カルーク」と言うとジローは涙と鼻水を流しながら「エガッター ウレジグデウレジグデ」と身悶え、手に唾を吐きかけて気合をいれて「ホンジャ よーし」と準備をする。

しかし、ヨーコは「ベロは入れるのはダメ」など4つのお願いをする。最後のお願いは「まず目をつぶって」と言い、その間にヨーコは「このまに逃げろー スタコラサッサ」と逃げてしまう。ジローは目をつぶりながら「どこだ どこだ」と歩き回って終了。

東海林氏の作品を読むと、「なんだ、私って魅力あるんだ」と思えるのではないでしょうか。自信が出ます。ただ、昔の本なのでいわゆる「ブス」を徹底的にブスに描きその女性が貶められたりするシーンも時々登場しますので、そこは不快に思うかもしれません。

さすがにこの2作品は今は入手しづらいかもしれませんが、現在でも週刊文春で連載中の『タンマ君』は手に入りやすいです。毎日新聞で40年にわたって連載されていた『アサッテ君』はファミリー向けの無難なものが多いので、それ以外の作品をお勧めします。特に初期のものであれば、どれでもいいです。

『タンマ君』

最後にもう一つ。柴門ふみ原作『あすなろ白書』のドラマ版で木村拓哉が演じる取手治は男の気持ちがよく描かれています。今では考えられませんが、二番手男として色々葛藤する様はモテない男からすれば共感できます。

『あすなろ白書』

最後に、と言いつつもう一つ。柴門さんが現在『女性セブン』で連載中の『恋する母たち』に登場する男は「駆け落ちする男」「秘書と不倫する男」「人妻と不倫したい落語家の男」「妻に不倫された作家志望のヒモ夫」「年上女性に憧れる若い男(結局不倫に溺れる)」といった多種多様な男が出てきます。いずれも「いるいるこういう男」と私は思うし、柴門氏がいかに男を鋭く見抜いているかが良く分かります。コミックスは6巻まで発売中です。

『恋する母たち』

Text/中川淳一郎

初出:2020/6/1