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お姫さまになりたかったわたしたちへ。君の宝を投げ出すな/葭本未織

女性が夕暮れを浴びる画像 一ノ瀬伸

もしもなれるものならば、何にもできないお姫さま、になりたい。そう思っていた。今も心の底で願ってしまう。

劇作家と、劇団主宰という職業をやっている。わかりやすい言葉で言えば、脚本家でイベンターだ。演劇の台本を書き、企画し、資金を調達し、上演する。23歳の時に初めて、もうすぐ3年だ。

こんにちは、劇作家の葭本未織です。このたびAMにて連載を始めさせていただきました。と、わたしはパソコンに向かって打つ。薄い壁にタイピングの音が響く。ここはわたしの小さなお城。
先週から始まったこの企画のタイトルは『君はヒロインなのだから』だ。ああでもないこうでもないと打ち合わせをした結果、担当さんがつけてくれた。

“ヒロインとは物語の中で一番もがく存在だ。だから今苦しくとも、わたしはこの人生の主役だと胸を張って苦しみに身を投じろ”……とわたしは書いた。
指を止める。果たして1DKの軽量鉄骨の家に住むヒロインはどんな物語の主役だろうか。

日常じゃ、とてもじゃないが言えないことを「演劇」にしている。わたしにとって言えないことは山のようにあるが、今日はそのうちの一つを告白しよう。

わたしは本当は、毎日泣き出したい―――。

ああ、言ってしまった。タイプする指が震える。
もっと正直に書こう。朝起きて・駅への道すがら・職場の前で・昼時の定食屋で・帰宅ラッシュの中・夜の布団の上で・24時間いつだって・どこででも、わたしは毎日泣き出したい!!! だけど毎日我慢している。泣き出してはいけない。なぜならわたしは、いつも・朗らかに・笑っていなければ。そう、そういう自分でいなければいけないから!

と、あふれ出した言葉を止めて、考える。
いつも・朗らかに・笑っていなければ……ってどうして? なぜそう考えるようになったんだっけ?

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